短編

□12月31日
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12月31日、現在11時30分。
今年も後わずか。


年越しそばも早々と食べ終わらせて、準太は部屋でゴロゴロとCDを聴きながら携帯をいじっていた。



『…ねみ…』



欠伸を1つ。普段夜更かしなんてしない準太にこの時間はつらい。

今年の終わりと来年の始まりを迎えようと起きているが。そばを食べて腹は膨れ、満腹感が眠気を誘う。


別に年が変わるだけだと自分に言い聞かせ寝てしまおうか。

1階では弟の笑い声。どうせ年末お笑い番組でも見ているのだろう。



『紅白見ろよ紅白』



携帯を閉じて枕に顔を埋める。
新年まで、あと20分。














携帯が鳴った、しかも電話。

うるさい、と手にとって開けてみる。



《榛名元希》



こいつは…タイミングが悪いと思いながら、通話ボタンを押す。



「…なに」

『おー起きてた、珍しい』

「……」



今から寝ようとしたんだよ。

そう呟いて話を続ける。



「何?ヒマなの?」

『まあヒマって言ったら、ヒマだ。オレさあ、今外にいるんだわ』

「外?なんで、初詣にでも行くのか?」

『準太次第』

「は?」

『一緒に行こーぜ、もう着くからさ』

「は…あ?」



目が覚めていく。

つか拒否権はいつも通りねえ、と言葉は続く。
やっぱりか…と準太。


ああ、自分は最後の最後までこいつに振り回されるのかと悲しくなった。



「……今どこ」

『もう着く………着いた』

「早。今行く」



電話を切ると、CDコンポの電源も切ってジャンパーを羽織る。
持ち物は財布と携帯だけ。


下に降りて、榛名と初詣に行ってくると親に言い残し外に出た。


当然、外にはこの男。



「よっ」

「前もって言っとけよな…」

「急にヒマになったから」

「てめえの都合で他人を振り回すな」

「うわ、今年最後の説教?」

「うるせ」




榛名の笑う顔を見て、準太は歩き出す。


新年まで、あと15分。



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