保管所

□春(赤ずきんチャチャ)
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春は出会いと別れの季節。
学校では入学し誰かと出会い、卒業し誰かと別れる。
奇人変人人外が集うここうらら学園とて例外ではなく、今日はまさにその卒業式の日なのだ。

いつもにも増して騒がしい校舎をあちこち周り眺めながらポピィは一人感慨深い思いでいた。
(もう卒業なんだな)
「ポピィ先輩」
突然足下から自分の名を呼ばれ、彼は視線を下に落とした。
「なんだ、ナミお前か」
小さい身体でピンクの髪を二つに縛った娘はポピィを見上げていた。
「先輩、ご卒業おめでとうございます!」
祝いの言葉を述べナミは大袈裟におじぎをした。
「どうもな」
「私たち、ポピィ先輩や卒業する先輩たちのために歌を何回も練習したので聴いて下さいねー」
ときどき目を伏せながら、しかし口元に笑みを浮かべる。
「ああ、わかってる。…ところでその隠してるブーケはなんだ?」
ナミは後ろ手に持って隠してるつもりなのだろうが、上から見てそれがブーケなのはバレバレだった。
「はい、これはですねー」
「俺か、それともマリンにでも贈るのか?」
「えー、お姉ちゃんになんかあげませんよー…だって」
ナミの言葉が途切れた。
口がへの字に曲がったかと思うと、目に涙が溢れてきた。
「お、おい」
「だって…だってお姉ちゃんは毎日会えるけど、ポピィ先輩にはもう…もう会えなくなるじゃないですかっ」
「…」
ポピィの卒業する悲しみを堪えて、笑顔で祝おうとしたこと。
彼が彼女の考えに気付いたときには遅かった。
「このブーケはしぇんぱいにあげますっ…お、おこずかいでかいましたっ」
足下で泣きながらナミはポピィにブーケを差し出した。
この状況で困ったのはポピィである。
悪気がなかったといえ余計な一言がきっかけで彼女を泣かせたのは事実だし、この場面を市松らバナナ組の連中に見られたら何かしら面倒なことになるのが目に見えていた。
しかも不幸は続くもので、
「みっ、みっ、みっ、みっ」
とその市松が接近してくる音まで聞こえてきた。
(やばい、やばいぞ!?)
咄嗟に右手にナミを、左手にブーケを抱え彼はテレポートした。
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