story

□彩色
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 二十二時。仕事の帰り。街灯の灯りがぽつぽつと夜道を淡く照らしている。今日は何時もより早く帰れた。何故だか、少し帰宅が遅くなるだけでいつもと異なる気がした。今日は少し寄り道をして帰ろう。そう帰路に就かずに公園へ足を運んだ。
 夜の公園に子供がいないのは論を俟たない。でも、普段は子供の高い声が響いているから違和感を覚えた。私は舗装された道を歩く。道には砂利が散らばっていて、パンプスで歩くと砂利が音を立てる。小さい頃はスニーカーで砂利を踏む感触や音が好きでその場で耳を凝らしながら足踏みをしていたななんて思い出に浸っていると、背後から誰かが走ってくるような音が徐々に迫ってきた。心臓が脈打つ。どうしようひったくりだったら、痴漢とか?!と頭の中は身の危険を案じるばかりだったのだが…背後を走っていた人物は私を通り過ぎて行った。なんだ、ただランニングをしていただけか。私は安堵のため息をついた。茶色の短髪の男性。どこかで見たことあ後ろ姿だが、安心しきって思い出す事もままならない。
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