story

□十年
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 十年。十年が経った。長いようで短かった時間。

 幼馴染みから貰った白色の可愛らしいグローブ。とても格闘用には見えないが。使い古したそれを手に嵌める。
「そろそろ行くよ、青。」
「ぼんやりしてたら顔面殴られて歪んじゃうよ?んふふ。」
「もう、今行くから置いてかないでよ。」
彼らは私を導いてくれる。今ここに立っているのも彼らの、そしてあの人たちのお陰。
 控え室を出れば、どっと歓声が耳を劈く。溢れんばかりの熱気。スクリーンには、師匠の技をアレンジしている青少年と、緑の炎を操るブロンドヘアの青少年。まったく違うタイプだし、元々二人の仲は険悪だった。でも今はどうだろう、彼らの表情は晴れ晴れとしているし互いに楽しそう。負けてられない。さぁ、次は私たちの出番。緊張で落ち着かない。膝が笑ってる。でも、それを上回る程身を焦がすこの興奮。

ああ、生きるって素晴らしい。
戦うって素晴らしい。
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