小説置き場
□出会い
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何やら城内は騒がしそうだ。
俺 佐々内蔵助は、五郎座、犬千代の3名にて、鳴海城内にて捕らえられている村人の奪還作戦の最中に居た。敬愛する殿 織田信長様からの直々の命令に、この作戦は必ず成功させなければならない。
「私たちが侵入したのが気取られたのかもしれません。内蔵助、様子を見てきてもらえますか?」
そう指示するのは五郎座だ。普段はただの優男(実際には女にも間違われるほどのだ)だが、その頭は殿の認めるぐらいの策士だ。反対する理由も無く、僅かに頷くと、俺は城内に侵入するのであった。
「「(見張りは体が大きい侍が多いうえ、鎧がやっかいだ。)」」
「「(まともに組んだらこちらが不利。こういう時の必勝法は)」」
内蔵助とかさねは城外の壁伝いに駆けていた。
すぐそこに殺気があることに気づき、
「「(出会い頭の一瞬で打ち込む!)」」
互いの武器を思い切り叩き込んだ
動きはとてもスローモーションに見えたと思う。かさねは、想定よりも小柄な男の子に、内蔵助は小柄な女の子に自身の武器を向けていたことに即座に気づき、相手の喉元に触れる数ミリで動きを止めた。
「「・・・ん?」」
想定外の人物に、互いに疑問符を浮かべた。
内蔵助は目の前の少女 かさねを見た。
見慣れない着物に、棒を振りかざす少女。敵方の忍にしては奇妙な格好であり、かなり異質に思えた。
「おい、お前・・・」
「かさねちゃん!大丈夫!?」
数名の女性達が石を投げながらこちらに駆け寄ってくる。恐らく、今回の奪還作戦での救出すべき村の女性達だ。
タイミングが悪く、敵と思われたのであろう、拳大の石が避けきれず、内蔵助の頭部に直撃した。
「痛、、」
「み、みんな。多分この小さい人、お城の見張りと違うんじゃ。。」
かさねは、痛みに悶える内蔵助の頭に手をやり、顔を覗き込みながら
「大丈夫?」
と声をかけた。
どきり
内蔵助の心臓が少し跳ねた。女性に触れる機会が無いから、という理由もあったのかもしれないが、目の前の少女に対し、可愛いと思ってしまっていた。顔が熱い。
「(いや、どう見ても怪しいやつだろう。変な格好だし)」
すぐさま否定し、その手を払い除ける。
「くらがやられてる!!」
犬千代がしゃがみ込んでいた内蔵助を見て叫んだ。相手は誰だと考えた結果、棒を持った少女がやったことだと判断し、すかさず槍を打ち込む。
咄嗟のことではあったが、かさねは棒にてその槍をいなした。
「へ・・・?」
犬千代は自分よりも小さい少女がそこまで反撃してくると思わず、かさねがもう一撃を振るった時には地に背中をつける。
「おや、これは一体・・・?」
その様子を見ていた五郎座は、地に伏した仲間を唖然として見るのであった。