文ストの短編
□理想から掛け離れた日
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(国木田視点)
気が付いたら暗闇の中で。
・・・俺はその中を歩いていた。
だが歩いても歩いても、光も何も見えない。
異能で懐中電灯を出そうにも、愛用の手帳さえも見当たらない。
仕方がないのでまた歩く。
歩く。歩く。歩く。
しばらくすると、光を背にして誰かが立っているのが見えた。
ここに来てようやく人に会えた安心感に、居ても立ってもいられず。
俺はその人に駆け寄った。
そこに居たのは、見知らぬ女性だった。
文字通り後光を背に、美しく微笑む女性がいた。
その微笑みの美しさに、優しそうな雰囲気に、温かみに。
思わず声を掛けて名前を聞こうとして、息を吸って――――――
そこで目が覚めた。
どうやら俺は夢を見ていたらしい。
なんだか残念なような後ろ髪を引かれる思いを覚えるが、予定が崩れるのは俺の理想ではないため無視して朝の支度を始めた。