刀語の短編

□初めてのキスは「   」味!
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(左右田視点)

うだるような夏。その昼日中、さしもの私もその蒸し暑さに少し参っていたそんなある日。
否定屋敷のはずれの縁側にて。私たちは久しぶりに共に休みを謳歌していた。

隣でソーダを口に運ぶ名無しさんを目の端に捉えつつ、私はかき氷を口にする。
掛けた糖蜜は檸檬。冷たくも、この暑さに丁度いい。

そんな中ふと、名無しさんが私のかき氷を見て口を開く。

『ねぇ右衛門左衛門。
「初めてのキスはレモン味」って言うじゃない?』
「・・・そうだな。俗説だが」

しかし、名無しさんはソーダの入った容器を頭上へと掲げて意気揚々と叫ぶ。

『・・・でもね。
私はその俗説に否!と叫びたいのだよ!』
「ほう。ならば、その理由はなんだ」

どうせまたよく分からない、くだらない理由なのだろうが。と脳内で独り言ちる。

・・・まぁ、なんだかんだ言っても。
惚れた弱みというやつのせいで受け入れてしまうのだが。

『だって、私。
初めてのキスはレモン味では無かったからね。』

その言葉に名無しさんと付き合って初めてした口づけを思い出す。
確か、あの時私は名無しさんが金平糖を口にした直後に唇を奪ったはずだ。


―――ならば、その味はレモンではなく金平糖味。という事か。なるほど。
独り納得した私は、名無しさんに言葉の続きを促した。


「では、金平糖味という事か。」
『いや違うよ?』
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