刀語の短編

□にゃん刀 鉤
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そして私と左右田さんはとある洞窟に行くことになったのです。
洞窟の中は暗くて空気が少しひんやりとしていて、足音もよく響く。

『・・・それで、ここまで来た訳ですが・・・
この辺りにあるらしい、って事以外の情報って何かありましたっけ・・・?』

先頭を歩く左右田さんに声をかけてみた。
洞窟の中を歩いているせいか、なんだか話でもしていないと不安になってしまうような、真昼間のくせに何かが出そうな雰囲気があるせいで怖いのだ。

「名前くらいだな。
・・・聞いていると頭が痛くなりそうな名だが」

左右田さんがうんざりとした声色でそう言いながら、自身の額(とはいっても仮面越しにだが)に触れる動きをした。

・・・え、聞いていると頭が痛くなるような名前って何?

『え・・・。どんな名前なんですか?』

「・・・・・・・・不言(いわず)。
あまり言いたくない。」

困った。
ただでさえその刀の詳細な情報は、左右田さんにしか聞かされていないのだ。
聞こうにも姫様から「いいからちゃっちゃと行ってきなさ〜い」と話をそらされながら、背中を物理的に押されてそのままだったのだ。

だからこそ、左右田さんの言いたがらない様子を見てますます気になって仕方なくなってきた。

『そんなこと言わずに教えてくださいよー!
刀の詳細を知っているのは、左右田さんだけなんですから!
というか・・・情報がないのに、どうやって探せばいいんですか?』

「・・・はぁ・・・。
・・・・・・・だ。」

ため息をついてからすごく言いたくなさそうに、絞り出すような声で左右田さんは何かつぶやいた。声が小さすぎて聞こえなかったけど。

『あの、それじゃ聞こえな―』
「っ、にゃん刀 鉤だ!!」


『・・・・・え?』

聞こえてきた言葉に足が止まった。
待って、待って。あの左右田さんの口からめちゃくちゃかわいい言葉が聞こえてきたような気がする。

・・・にゃんとう かぎ?
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