□第一章 前編
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最近新しいサバイバーが荘園にやってきた。名を名無しさん、虚言師らしい。

今日はその虚言師と初めてゲームを共にする日だ。

虚言師という職業に興味を抱きながら、私はホールの扉を開けた。

その先には見慣れない女性が座っていた。きっとあの人だろう。

どうやら私の待ち席は彼女の隣らしい。隣に座ろうとすると、彼女と目があった。

するとすぐに彼女は自己紹介を始めた。

『こんにちは!私は名無しさん。よろしくー。』

人懐っこい笑顔を浮かべながらそう挨拶する彼女に私は好感を覚えた。

「私はイライ・クラーク。よろしく。」

『へぇ、イライ!いい名前!イライは何をしている人なの?』

「占い師だ。」

『占い師!すごいね、私の未来とか見えちゃうのかなー?』

私はあまり会話が得意な方ではないが、彼女が楽しそうに話をしてくれるので私も楽しくなる。

「君は虚言師と聞いたのだが、どういう職なんだ?」

そう聞くと、彼女は驚いたような顔をした。しかしそれは一瞬で

『私の職業って虚言師になってるんだ〜。』

とすぐに笑顔になった。自分の職業を知らされてなかったのか。

「知らなかったのか?」

『心当たりがないわけじゃないけどね、まぁ怖い人ではないから安心してよ!』

「あぁ、話していたらわかる。」

彼女と話していて心地よくなったのは事実だ。荘園内で人とコミュニケーションをとることでさえ少なかったこともあったのだろう。私はそんなことを口走っていた。

『あー、ダメだよイライ。』

しかし、そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべていた。

『私って、ほら虚言師だから。』

その笑みはどこか悲しそうだった。
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