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□猫になりました2
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私用でセバスチャンを伴い、街へと出てきたシエル。
歩いている途中、セバスチャンのベストのあわせからピョコンと飛び出した小さな後ろ足に、シエルは顔をひきつらせた。
「おや。ベストのボタンの下から右足が・・・」
「・・・おい、セバスチャン。今日は名前は留守番だと言った筈だか?」
惚けた様子のセバスチャンに、こめかみを押さえながらシエルが指摘すれば、
「今日は寒かったもので、カイロ代わりに懐に入れて忘れていました。」
セバスチャンは悪びれた様子も無く、
飄々とそう答えた。
「・・・カイロ。」
呆れて何も言えないシエルに、
「其れより坊っちゃん。名前の寝相、愛らしくないですか?私の懐の中で海老ぞりになっているんですよ。何時も寝相が悪くて、今朝も・・・」
そうセバスチャンが言った瞬間、今度はピョコンと、右足の下から、何故か左手が出てきた。
(・・・どんな体勢で寝ているんだ?)
猫の身体は柔軟ですねぇ等々、愛猫自慢を始めたセバスチャンと、寝相の悪い名前に、シエルは溜め息を吐き、
「・・・判った、判った。お前の愛猫自慢はウンザリだ。先を急ぐぞ。」
いつまでも続きそうな、セバスチャンの話を遮り、再び歩き出すのだった。
目的地に着いたと同時に、目を覚ました名前。
(あれ?いつの間にか場所が移動している・・・何故こんな所に?)
戸惑い辺りをキョロキョロと見回す名前の様子にシエルが、
(・・・寝ている所をセバスチャンに拉致されたのか。というか、今まで気付かないというのは、猫としてどうなんだ?)
呆れた様子で見ていたのは、言うまでも無い。