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□刀装君3
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清光ら第一部隊と共に遠征に行った三日月。
置いていかれた名前は、安定と共に他の刀剣に慣れる為、厨を目指した。
「あっ、何か良い匂いがするね!」
安定に同意して、コクコクと頷く名前。
二人でソッと、厨を覗くと中では目的の刀剣達・・・燭台切光忠と堀川国広が夕食作りをしていた。
「お邪魔しまぁ〜す。」
安定が中に入ると、
「大和守さん!当番でしたっけ?」
新撰組繋がりの国広が、首をかしげる。
「いや、当番じゃないんだけど。主に頼まれて、名前の人見知りを治す為に、二人に会わせようと思って・・・」
「僕達に?」
食事作りの手を止めて、光忠も安定を見た。
「名前、こっちは同じ新撰組の刀だった・・・」
「堀川国広といって、和泉守兼定と一緒に土方歳三が使っていた脇差さ。兼さんに何かされたら、僕に言ってね!」
「僕は燭台切光忠。伊達政宗公に使われていた刀なんだ。料理の事なら僕に任せて。」
ビクビクしながら安定の肩に掴まり、二人を見ていた名前。
二人の挨拶に返事をするようにペコリと頭を下げ、直ぐに安定の懐に隠れてしまった。
「あっ、名前!」
困り顔で懐から様子を伺う名前を見つめる安定。
「そうだ。これはどうだろう?」
そう言って光忠が名前の目の前に差し出したのは、おやつで残ったクッキーだった。
途端に、名前は瞳をキラキラさせて、視線がクッキーに釘付けになる。
チラリと光忠を見上げる名前に、
「どうぞ?召し上がれ。」
光忠がニコリと告げると、名前は安定の懐から出て、フヨフヨとクッキーに近づき、恐る恐る受け取った。
自身の半分以上のサイズのクッキーを受け取った名前は、安定の肩に戻ると、自分で食べる分を割って確保した。
そして、残りを安定に差し出す。
「へっ?僕にくれるの?」
問う安定にコクコクと頷く名前。
まさか、自分に分けてくれると思っていなかった安定は、ビックリするが、
「ありがとう。」
笑顔を浮かべて受け取ると、名前の頭を撫でた。
「二人は、仲が良いね。」
「本当に。」
そんな二人を微笑ましげに見つめる光忠と国広。
二人の視線を気にせず、クッキーを食べる名前。
「あっ、頬っぺたに付いてる。」
国広は、名前の頬っぺたに付いた食べ滓を取ってあげる。
こうして光忠に餌付けされ、国広に世話を焼かれた名前は、二人に懐くのだった。