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□刀装君
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ほけほけしながら、ジジイこと、三日月宗近が主に頼まれて刀装を作っていた時、それは起こった。
霊気を込めた瞬間、何時もと違い虹色の輝きを放ち現れた珠。
「む?」
光がおさまった時、そこにあったのは、真珠の様に真っ白な刀装だった。
「ほう。これはまた、面白い。」
そして、その刀装から出て来たのは、どの刀装とも明らかに違い、全身真っ白な狩衣に、蜂蜜色の髪をポニーテールにした妖精さん。
「私の名は、三日月宗近だ。宜しく頼むぞ。」
その妖精さんは、ふわふわと浮遊し三日月の掌の上に、ちょこんと正座すると、返事をするかの様にペコリと頭を下げたのだった。
そんな妖精さんを掌に乗せたまま、三日月は主に報告をしに向かった。
「主、珍しい刀装が現れたぞ。」
「三日月・・・主は今、書類整理の真っ最中で忙しい・・・」
自称【主お世話係】の長谷部が、主の代わりに部屋から出て来て対応するが、三日月の掌の妖精さんを見て固まった。
「どうした?長谷部?三日月?」
何時まで経っても無言な二人を不思議に思った主が、部屋から顔を出した。
そして、三日月の掌の妖精さんを見た瞬間・・・
「何、コイツ!!めっちゃ可愛い!!」
可愛いモノ好きな主が食い付いた。
三日月から経緯を聞いた主は、
「こんのすけを通して、コイツの事を担当者さんに訊いてみよう!」
と、早速この本丸の政府担当者に、この見た事の無い刀装について問い合わせた。
「それより、三日月、コイツの名前は?」
「知らん。」
主に問い掛けられて、即答する三日月。
妖精さん自身も首をかしげる。
そこで漸く固まっていた長谷部が、我にかえった。
「まさか、主!こんな得体の知れないモノを本丸に置くつもりですか!?」
妖精さんを指差し主に訴えるが、長谷部の言いぐさに、心なしかションボリする妖精さん。
そんな妖精さんを三日月がヨシヨシと、指先で頭を撫でて慰めた。
「長谷部が酷い事を言うから、妖精さんが落ち込んじゃっただろ!妖精さんは刀装として、この本丸に来てくれたんだ。悪い事する筈無いだろ?」
それに、この天下五剣の三日月宗近が作った刀装だぞ?
主に責められて、
「うっ・・・」
何も言い返せ無い長谷部。
「はっはっはっ。」
そんな二人のやり取りを見ていた三日月は、
「長谷部も主を心配しているんだ。主、其処までにしてやってくれ。刀装も長谷部を許してくれんか?奴は主思いの良い奴なんだ。」
そう主と妖精さんに言うのだった。
そして三日月を真っ直ぐ見つめて、コクリと頷く妖精さんを見て微笑んだ。