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□審神者追い出されました
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審神者に選ばれて、あれよあれよと云う間に、早数年。

初期刀は加州清光。
初期鍛刀は薬研藤四郎

今では、こんのすけに色々教わりながら、三人でてんてこ舞いしていた、最初の頃が懐かしい。

刀剣男士も、だいぶ増えて、皆で和気あいあいと仲良くやっている。そう私は思っていた。

あの日までは……

『新米審神者の研修ですか?』

其れは、政府のエリア担当者さんからの依頼だった。

《君も自分の本丸を持つ前に、先輩審神者に一度お世話になったでしょう?お願い出来ないかな?》

担当者さんの言葉に、自分が先輩と云われる、新米審神者を指導する立場になったんだと、考え深く思った。

『判りました。』

私は、其れを快く引き受けた。

本丸にいる刀剣男士たちに、その旨を通達し、数日後。

やって来た新米審神者は、可愛らしい女の子だった。

私から見ても、清い霊力を持った良い子だと思う。

この子ならば、良い本丸を築いていく事だろう。

研修は一月間。

あっという間に過ぎて行き、明日が最終日となった時、其れは起こった。

「主、ちょっと話があるんだけど?」

清光に呼ばれて行った大広間には、本丸にいる刀剣男士たちが、全員揃っていた。

何故か二つに別れて、互いに睨み合って居る。

今まで仲が良かった彼らに、何があったのか?

『此れは一体……』

戸惑いながら問い掛ける私に、清光は

「単刀直入に云うと、主に本丸を出て行って欲しいんだよね。」

信じられない事を告げた。

『……えっ?』

愕然とする私に、

「俺たちは主では無く、研修に来た彼女の元で戦いたい。」

更にそう続けた。

初期刀である清光に云われた、その台詞に私は目の前が真っ暗になった。

気付いた時には、私の元に残ってくれた、薬研と五虎退、鶴丸と宗近、今剣と岩融の6人と共に、担当者さんの元に来ていた。

憔悴する私を見て、6人から事情を聞いた担当者さんは、

「本丸の乗っ取りって訳では無いみたいだけど……どうする?」

そう問い掛ける。

『………付喪神といえど、彼らは神様。きっと、私に至らない所があったのでしょう。』

「あるじさまに、そんなところ、ありません‼」

そう云ってくれる今剣に、ありがとうと答え、私は決断した。

『あの本丸は、彼女に譲渡します。本丸に残ると決めた彼らごと。………私たちが築いていた絆って、何だったんですかね?私の思い違いだったのでしょうか?』

そう呟いたら、今まで我慢していた涙が頬をつたった。
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