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□鬼灯様と雪鬼
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『……暑い〜、溶ける。』
八寒地獄から八大地獄へ、春一を探しにやって来た名前。
『くそじじいめっ……パシらせやがって……』
八寒地獄の臛臛婆(かかば)の長に、
「春一が白熊と八大へ帳簿を届けに行ったきり、戻って来ないから迎えに行ってこい!」
と言われて、名前は寒い八寒から、暑い八大までやって来た。
『春一が行きそうな所だと……血の池か?アイツ、いつも釣りしてるし。』
当たりをつけて向かってみれば、パンツ一枚で寝転び釣りをする春一と、暑さでへばった白熊を見つけた。
『おい、春一!お前、またパンツ一枚で何やってんだよ⁉』
慌てて駆け寄ると、春一達の他に黒い着物の鬼が居るのに気付いた。
「あっ、名前!だって暑いんだもんよぉ〜。パンツ(モラル)だけでも履いているから、良いだろ?」
『……そういう問題でも無いと思う。』
顔を引きつらせる名前。
「貴方も八寒の雪鬼ですか?雪合戦の時や、氷の像の時に見かけませんでしたが……」
『あっ、はい。春一の同僚で、名前っていいます。雪合戦の時は俺、実家に帰省中だったので不参加でして。氷の像の時は裏方してたんです。あの、失礼ですが……貴方は?』
自分に話し掛けてきた鬼に、名前は首をかしげて問い掛ける。
「名前、この人が鬼灯様だよ。」
すると白熊が、そう紹介した。
『えっ⁉貴方が……いつも春一がご迷惑お掛けしてすみません。』
慌てて鬼灯に頭を下げる名前。
『もしかして、今現在進行形で何か、ご迷惑を……?』
そして、顔を引きつらせながら白熊と鬼灯に訊ねると、
ウンウンと頷く白熊。
「臛臛婆の長に、抗議をしに行くそうで、私にも弁が立つからついてこいと……」
鬼灯がそう言った。
『春一!お前なぁ、鬼灯様は閻魔様の第一補佐官という、忙しい人なんだぞ⁉確かにあのじじ……長はムカつくけど、関係の無い人を簡単に巻き込むな‼』
(今、じじいって言いかけた。)
春一を叱る名前を見て、そう思いながらも、鬼灯は八寒にしては珍しくまともな名前に好感を持ったのだった。
*
そして、やって来た八寒の長の塔(別名・八寒灯台)。
結局ついて来る事になった鬼灯に、申し訳なさそうな名前。
そんな二人をよそに、白熊に跨がっていた春一は、塔につくなり、いきなり、
ガンッガンッ
塔を思いっきり蹴り、
「じじい覚悟しやがれ、裸一貫で話に来たぞぅ‼」
塔に向かって叫んだ。
「ダメだ【きちんとはなしをする】ということを、わかっていない。」
防寒対策バッチリな鬼灯が呆れる中で、春一の暴挙に名前は頭を抱えしゃがみ込んだ。