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□白血球さんと血小板ちゃん
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ここは人間の体の中。
今日も細胞たちは、元気に働いています。
「うんしょ。」
「うんしょっ。」
「うんしょっ。」
血小板ちゃんたちが、大きな荷物を皆で協力しながら運んでいた。
大きなシャツに膝丈のズボン。
【血小板】と書かれた帽子をかぶり、皆お揃いの格好をしている。
「あっみんな、止まって―!」
先頭を歩いていた血小板ちゃんが、皆にストップをかける。
「階段があるよ……」
「わ―本当だ―!」
先頭を歩いていた二人が、目を合わせると、
そ〜〜〜………そろそろそろ、そっ………
ゆっくりと足下に気を付けながら、階段を降りていく。
「「おりられたぁー‼」」
血小板ちゃんたちの、歓声が響いた。
最近、血管の中は平和です。
「あっ、おとしちゃった、ひろってー!」
両腕に荷物を抱えた血小板ちゃんが、中身の一つを落としてしまった。
「コレ?」
「あっ赤血球のおねーちゃん!ありがとう!」
可愛らしい血小板ちゃんに和むAE3803赤血球。
その時………
ドゴォォォォ‼
凄い衝撃と共に、すり傷が出来た。
突如できた傷口に落ちまいと、逃げ惑う赤血球たち。
傷口から、うじゃうじゃと細菌たちが侵入して来て、白血球たちが集まり戦い始め、あっという間に血管の中は混乱に包まれた。
「「おつかれさまです‼」」
そこへ登場したのは、先程まで大きな荷物を運んでいた血小板ちゃんたち。
皆一様に、大きなショルダーバッグと、【GP1b】大きくと書かれたリュックを背負っている。
「はぐれないように勝手な行動はしないこと!」
「「はいっ!」」
「他の子とケンカしないこと!」
「「はいっ!」」
「GP1bとかをちゃんと使って、飛ばされないようにすること!」
「「はいーっ‼」」
「凝固因子は持ちましたか?」
「「持ったよー‼」」
唖然とする細菌たちをよそに、いくつか確認して
「よーしっ!それじゃあいくよー‼」
血小板ちゃんたちは、傷口に向かって走り出した。
「血小板を援護しろ‼」
細菌たちから血小板ちゃんたちを庇い、道を開けてくれる白血球たちに、
「ありがとうございまーす!」
お礼を告げ、傷口まで到着すると、
「落ちないようにねー」
より傷口の近くまで、ロープを伝い降りていく。
「フィブリン集め終わりました!」
「はいっ!じゃあ凝固因子を出してください。」
「凝固因子でフィブリンをつなぎ合わせてね。」
皆で協力してフィブリンをつなぎ合わせていく、血小板ちゃんたち。
つなぎ合わせ終わると、
「いくよー!」
「「よいしょ―――っ‼」」
大きくつなぎ合わせたフィブリンを、皆で力を合わせて広げると、傷口をフィブリンでふさいだ。
「「血栓完成――っ‼」」
血栓が出来たことで仲間を呼べなくなった細菌たちは、白血球たちに駆除されたのだった。
最後の一匹を駆除した1146白血球は、血栓の上に落ちた。
助けたお礼を言いに下りてきたAE3803赤血球と話していると、大きなショルダーバッグを下げた血小板ちゃんがやって来た。
「「がんばれ!」」
他の血小板ちゃんたちに励まされ、モジモジと1146白血球に話し掛ける血小板ちゃん。
「お、おつかれさまです……」
「?あぁ…この前の血小板か、おつかれさん。」
(もしや、これは……)
AE3803赤血球はもしかしたら、この血小板ちゃんは、1146白血球さんに気があるのでは?と気付いた。
「あっあの!良かったらコレ使ってください‼」
血小板ちゃんがショルダーバッグをゴソゴソと漁り、1146白血球に差し出したのは、顔に付いた血を拭くためのウェットティッシュ……
しかし、フィブリンにくっついてしまっている1146白血球は、自分で拭くことが出来ない。
折角くれたのに、断るのは悪いと思った1146白血球。
「この通り動けないんだ。すまんが……拭いてもらってもいいか?」
「‼」
血小板ちゃんに頼んだ。
「はっ、はい‼」
いそいそと、1146白血球の顔に付いた血を拭く血小板ちゃん。
AE3803赤血球がコッソリ、この血小板ちゃんの事を、近くにいた他の血小板ちゃんに聞く。
なんでも以前、危ないところを助けてくれた1146白血球に、血小板ちゃんが一目惚れしたとの事。
それを聞いて、二人の様子をAE3803赤血球と他の血小板ちゃんたちは、ニコニコしながら見つめる。
血小板ちゃんの少し紅くなった顔に、頭に?を浮かべる1146白血球。
血小板ちゃんの気持ちに気付いていないのは、1146白血球のみ。
それから度々、仕事の合間に1146白血球の世話を焼く血小板ちゃんの姿が見られるようになるのだった。