SB69

□5話
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それはトラクロがバイガンバーVとの対バンが決まった時の事。

「なぁリク…」

「どうしたの?兄さん。」

おもむろに、カイがリクに質問をした。

「今度の対バン相手って、小さい子に人気のバンドなんだよな?」

リクは、対バン相手のバイガンバーV……日曜日に放送している、戦隊ものを彷彿させる衣装、曲調の彼らを思い浮かべた。

「そうみたいだけど……」

「サインとか、貰ってやったらナマエ喜ぶかな?」

それを聞いたリクは、

「兄さん、それは止めた方が良いよ。」

即答で止めた。

「なんで?」

首をかしげるカイに、以前ナマエと話したことを教えた。

「僕、前にナマエにバイガンバーVと忍迅雷音のどっちが好きか聞いた事があって……」

その時、ナマエは忍迅雷音と即答していた。
理由は、バイガンバーVの熱血的な所が、どうも苦手らしい。
その点、忍迅雷音は曲調も、ライブが終わると直ぐに姿を消す所もクールだと。

「そっか……」

良い思い付きだと思ったカイは、少しがっかりしつつ、ふと疑問に思った。

「……ナマエって、オレよりリクと仲良くない?」

(そりゃあ…色々と構いすぎては、ナマエの機嫌を損ねる兄さんよりは……)

とは思っても言えないリクは、

「そんなこと無いと思うけど……」

と、誤魔化した。
が、納得出来ないカイは、

「オレとリクのどちらが好きか、ナマエに直接聞いてみようぜ!」

「あっ!兄さん!」

そう言って、リクの制止も聞かずにナマエを呼びに行ってしまった。



*



突然、カイに嵐のごとく連行されて来たナマエ。

お昼寝の最中だっただけに、寝起きで少し不機嫌だ。

そんなナマエをリクが申し訳なさそうに見ている。

それに気付かないカイは、早速ナマエに訊ねた。

「ナマエ!オレとリクどっちが好き?」

『…………?』

首をかしげるナマエ。
正直言うと、リクも少し気になっていたため、カイと二人ナマエの答えをじっと待つ。

そんな二人を見たナマエの答えは……

『にいちゃ、ふたいとも、おんにゃじくらいしゅき。』

二人共、同じくらい好きというものだった。

その答えにがっかり半分、安心半分と感じていた二人。
しかし、次の言葉に衝撃を受けた。

『でも、いちばんはー、くーしゃ!』

「「⁉」」

衝撃を受ける二人を無視し、満面の笑みで断言したナマエ。

「「くっ、くーさん⁉」」

それは、お昼寝の邪魔をされたナマエの些細な報復だった。

実は【くー】とは、ナマエがいつも持ち歩くクマのぬいぐるみに、最近付けた名前なのだが、それをまだ知らない二人は、暫く【くー】なる人物に闘志を抱くのだった。

【く】が付く名前から、クロウが疑われたのは、別の話。


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