SB69
□2話
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まだナマエが幼い事もあり、シュウ☆ゾーくんの提案は保留となった。
確かに、キーボードやピアノが入っている曲を聞く度に、担当が居ないバンドはどうしているのかと思っていた。
が、まさかシュウ☆ゾーくんが、自分みたいな3歳児をスカウトするなんて、ビックリした。
*
それから暫くして、ナマエは兄たちに誘われてトライクロニカのライブに来ていた。
何でも、舞台袖で見ても良いという。
何時もは、両親や兄たちにお願いして、パソコンで見るライブ。
ナマエは初めての生ライブに、わくわくしていた。
終始ご機嫌なナマエに兄たちも嬉しそうだ。
『シュウ☆ゾーくん、こんにちは!』
会場に着くと、先ずはシュー☆ゾーくんに挨拶をした。
「やあナマエ☆ツインズから話しは聞いているよっ☆」
快く迎えてくれたシュウ☆ゾーくんと、兄たちを交えて話した後、其れからは、彼らのマネージャーさんに連れられて、舞台袖でリハーサルの様子や何やら見ていた。
トライクロニカは勿論、スタッフも皆キラキラして眩しかった。
そして遂に待ちに待った本番。
リハーサル以上にキラキラした舞台。
パソコンでは感じる事の出来ない、楽器の重低音を身体に感じ、ナマエは無意識にリズムに合わせて身体が動いていた。
そんなナマエの後ろでマネージャーが、可愛い‼と悶えながら携帯で撮影しているとも知らず……
「ナマエ!どうだった⁉」
舞台袖に退いてくるなり抱きしめてくるカイ兄に、
『カイにいちゃも、リクにいちゃも、かっこいー‼』
素直に答えたら、カイ兄も後から来たリク兄も嬉しそうにし、頭を撫でてくれた。
「さぁツインズ達、アンコールが始まるよっ☆」
「「はい!シュウ☆ゾーくん!」」
舞台へと直ぐに戻って行く三人。
一瞬、シュウ☆ゾーくんと目が合い、ニコリと笑われた気がした。
(……えっ、なんだろ。嫌な予感がする。)
……嫌な予感程よく当たる。
舞台へと戻りマイクを握ったシュウ☆ゾーくんは、アンコールのお礼をした後、
「此処でスペシャルなゲストを紹介しちゃうよっ☆ツインズたちの弟!ナマエ‼」
「「『えっ⁉』」」
此れには兄たちも初耳だったらしく、驚きながら、シュウ☆ゾーくんと、舞台袖に居る自分を交互に見ている。
(……名前を呼ばれたからには行くしか無いのか?)
周りのスタッフさん達を見るが、皆何故か視線を反らして、合わせてくれない。
渋々兄たちの元へと行くと、ライブを見に来たファンたちから、可愛い‼の歓声が聞こえ、自分は嫌悪感を抱かれていないようだと安心した。
「アンコールの曲には、ナマエにキーボードとして、参加してもらうよっ☆」
「「『は⁉』」」
またしても、兄弟三人の声が揃った。
見ると、いつの間にかキーボードが丁度良い高さで準備してあった。
(丁寧に楽譜まで……いつの間に⁉)
楽譜の曲名を見ると…
(これ、キーボードから始まるやつなんですけど⁉)
冷や汗が流れるのを感じた。
「ナマエ、皆にご挨拶できるかな?」
ナマエに話を振るシュウ☆ゾーくんが悪魔に見える。
『えーちょ……ナマエ、しゃんしゃいでしゅ!よりょしく、でしゅ!』
ハラハラしているらしい兄たちを横目に、なんとか名前と年齢を言って挨拶した。
会場からはまたしても可愛い‼の歓声が……
「それじゃあ、いくよっ☆【胸騒ぎJust☆Paradise】!!」
どうにでもなれと、兄たちに挟まれた位置で、楽譜とシュウ☆ゾーくん、兄たちを見ながら、必死で指を動かしたのだった。
*
ライブ終了後……
「お疲れ様っ☆ツインズ達、ナマエ☆」
「「お疲れ様です、シュウ☆ゾーくん」」
『……でしゅ。』
(……疲れた。でも楽しかった。)
ナマエは舞台袖に退いたとたんグッタリとした。
(……今考えると、おかしいと思っていたんだ。)
マネージャーさんに、兄たちに内緒で、兄たちの衣装と似た服に着替えさせられた事に。
(でもまさか、ぶっつけ本番で弾かされるとは……)
シュウ☆ゾーくんの強行手段にはビックリだ。
「やっぱり、僕の目に狂いはないねっ☆ナマエ最高の演奏だったよっ!」
『……あいがとーごじゃーみゃしゅ。』
ナマエはリクに抱っこさながら、お礼をすると、リクの胸に顔を隠した。
そして気疲れから、そのまま眠ってしまったのだった。
そんなナマエを優しい目で見つめるツインズたちと眠るナマエの三人を見ながら、シュウ☆ゾーは次の一手を画策するのだった。
そしてその後、
【ツインズの弟‼トライクロニカに加入か⁉】
と、紙面が騒がしくなる事をナマエはまだ知らない。