SB69

□1話
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自分が生前にはまっていたアプリゲーム……SB69の世界に、しかもあのカイ・リクの歳の離れた弟して転生して早くも3年がたった。

今ではトライクロニカとして、兄たちはシュウ☆ゾーくんと一緒に活躍している。

自分もやっと念願のピアノを習わせて貰えることになり、たまにトライクロニカは勿論、他のバンドの曲を弾いては、両親がその様子を携帯で動画撮影して、双子に送るというサイクルが出来ていた。

両親は、「可愛い」を連発して所謂親バカ丸出しだし、兄たちも歳が離れている事もあり、可愛がってくれている。

両親も、 兄たちも仕事で、その日は家政婦さんと自分しか家にいなかった。

背伸びをして漸く届くようになったドアノブを開き、ピアノ室に入ると両親の前では恥ずかしくて出来ないけど、トライクロニカの曲を――勿論、兄たちが歌う曲を口ずさみながら、弾き語りをした。

乗ってくると次は忍迅雷音、それから、ふと思い浮かんだアルカレアファクトの【今夜は黄金!パーリィーナイト!】と弾き始めたとき……

「その曲はまだナマエには早い‼」

慌てた様子で、いない筈のカイ兄に止められた。
その片手には携帯を握っている……

ピアノ室の入り口はピアノに向かうと背後になる為、カイの存在に全然気付かなかった。

今の弾き語りを撮影されていたと知り、羞恥に涙が浮かんできた。

手に持つ携帯への視線に気付くとカイ兄は、

「ナマエが可愛い事をしているからつい……」

慌てて言い訳をし始めたが、

『カイにいちゃ…きらい‼』

精神年齢も3歳児になっている自分は、我慢出来ずに、お気に入りのクマちゃんを握ると部屋どころか、家を飛び出した。



*



気付くと、其処は知らない場所。
泣きながらデタラメに走った結果、迷子に成りました。

クマちゃんのお腹の中には、携帯が入っている為、電話を掛ければ良いだけなのだが、まだ腹の虫がおさまらない。

ムスッとしたまま壁際に座り込んでいると、

「あぁ?ガキが1人こんな処で、なにしてんだ?」

頭上で聞き覚えのある声がした。
見上げると、其処にはシンガンクリムゾンズのクロウが居た。

兄たち以外にキャラクターに会うのは初めてで嬉しいけど……

(……柄が悪くて怖いです。)

何度も言うが転生してから、自分は精神年齢が3歳になっている。

そんな自分はすでに涙目になっていた。

其れを見てクロウが慌てていると、後からアイオーンとヤイバ、ロムと他のメンバーも来た。

どうやら此処は彼らの事務所の近くらしい。

「小さき者が、自分より小さき者をいたぶるとは……」

「なんだとコラ⁉俺は小さくなんかねぇし、虐めてなんかねぇ‼」

涙目の自分を見て、クロウが虐めていたと勘違いをしたアイオーンとクロウが言い争いを始めた。

ヤイバは巻き込まれたく無いのか、傍観している。

「いい加減にしろ‼」

ロムの拳が落とされた。

「……お前、何処の子だ?」

2人の喧嘩を止めると、ロムはしゃがんで自分に目線を合わせて、優しく話し掛けてきた。

些細な事だが、そんなロムの対応に好感度が一気に上がった。

『あにょにぇ……おうち、とびだちてきたの。』

自分は正直に家出したことを話す。

「家の場所、分かるか?」

『わかんにゃい。かえりゃにゃい。』

帰らないと言う自分に困った顔をしたものの、此処に1人で居たら危ないと事務所の下の喫茶店へと連れていって貰える事になった。
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