BSDわん!
□悪霊騒動
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「それにしても、取り憑かれたのが、太宰さんで良かったよね。無害、無害♪」
林檎を食べ再び眠る太宰を前に、鏡花に話す敦。
「他の社員がナマケモノになったら大慌てだったかも。太宰さんには、ゆっくり休んでもらって……」
敦がそう云ったとき、
『にいちゃ!』
ユラァッと動く怪しい黒い影に名前が気付いて声をあげた。
「しまった!今の話聞かれてた⁉」
慌てて敦と鏡花は逃げるが、
「鏡花ちゃん‼」
黒い影は鏡花にブンッと取り憑いた。
「鏡花ちゃんが太宰さん状態……いや、ナマケモノ状態に!」
すやぁっと眠ってしまった鏡花を目の前に驚く敦。
「次は乱歩さん…⁉」
『いちゅもどーり。』
何時も通り居眠りしている様にしか見えない乱歩の様子に、
「……うん。割りと何時も通りかも…国木田さんまでナマケモノに…!」
敦も同意したところで、黒い影は国木田に移った。
お腹の上で手を組んで、姿勢良く眠る国木田に、
『ぴしっとしてりゅ。』
「何かちょっと律儀!」
中島兄弟は各々感想を述べる。
その間にも黒い影は次々と違う社員に取り憑いていく。
そして、次に狙われたのは―――
『あきちゃしぇんしぇ‼』
「与謝野医師(せんせい)、危ない!」
与謝野だった。
与謝野は、ギロッと黒い影を見つめると、
「へぇ……一度、霊って云うのも解体して、みたかったんだよ。バラされるかい?」
愛用の鉈を肩に担いだ。
そんな与謝野にたじろいた黒い影は、近くの窓から逃げ出し成仏した。
与謝野はそれを、
「なんだい。」
つまらなそうに見ていたのだった。
*
その後、その話を敦が太宰にしたところ、
「私が悪霊に?ぜーんぜん覚えてない。」
あっけらかんと告げる太宰。
「大変だったんですよ。」
そんな太宰に敦は呆れ、
『名前、りんご、あげた。』
自分が太宰に、林檎を餌付けしたと告げる名前。
「え〜。名前君には、私が起きている時に、あーんして欲しいなぁ。さぁ、次はどんな手段でサボろうかな。」
名前を抱き上げ、去って行く太宰の背中を見て、
(太宰さん……謎な人だ……)
ナマケモノに取り憑かれたのが、本当か演技か疑問視する敦なのだった。