BSD2
□35話
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「《天人五衰》が盗み出した一片の【頁】……入る文章こそ少ないが、封印された【本】本体と同じ力を持っとる。」
種田はそう云った。
「【書いた事が現実になる】力……」
眉間にシワを寄せる乱歩。
『ぎりゅどにょ、だんちょー、ほしーやちゅ……』
それは、組合の団長であるフランシスが、死んだ娘を生き返らせる為に欲しがっていたモノだった。
「しかし、元々【本】には制約がある。それは書かれた内容が物語としての、因果整合性を持たねばならん事。」
「!」
「無論、この現実世界に物語的整合などと云う便利なモノは無い。人は偶発的・無意味的に死に、事件は真相も知られずに闇に消える。しかし、【本】の上書き能力には何故か物語的整合性が求められる。」
「それは、また……莫迦げた制約だ。」
呆れた様に云う乱歩に、
「儂も……そう思う。」
種田も同意する。
「恐らく、そう云う異能の異能力者が……拵(こしら)えたのじゃろう。まぁ【或ル日、人類ハ何故カ滅ビタリ】とだけ書いても無効という意味では……善い制約と云えるが……」
そう云うと種田は倒れ、
「種田長官?」
「作戦を棄て逃げよ……連中は探偵社を……破滅の呼び水にする気……」
そして乱歩に警告し、意識を失った。
「種田長官!」
『!らんぽしゃ、どっぽしゃたち!』
「!」
名前に云われ、ハッとした乱歩は直ぐ様、人質達を救出に向かっている国木田に連絡をした。
「国木田!直ぐ逃げろ!【不楽本座】とは――席に戻るのを嫌がるとは、探偵社の席の事だ!【天人五衰】の正体は武装探偵社だ‼」
その頃、電話の向こうで国木田達は、自分達の置かれた状況に愕然とするのだった。