BSD2
□33話
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携帯に吸い込まれた乱歩を待つ名前とポオ。
暫くカールを抱きしめ名前は待っていたが、
『ぽーしゃ。らんぽしゃ、だいじょーぶ?』
中々戻らない乱歩を心配し、自分を抱っこするポオに問い掛ける。
「乱歩君なら大丈夫。直ぐに戻って来るのである。」
そんな名前にポオが微笑み返した時、携帯が光り乱歩が戻って来た。
『らんぽしゃ!おかえりなしゃ!』
「ただいま、名前。箕浦君、虫太郎君が自首するそうだよ。」
乱歩の無事を確認し嬉しげに出迎えた名前に返事を返すと、箕浦に乱歩はそう告げた。
*
手錠を掛けられて、連行されて行く虫太郎を見つめる乱歩と名前に、ポオ。
そんな三人に携帯で誰かと話していた箕浦が話し掛けた。
「探偵社が採用している手榴弾が流通中に盗まれた証拠が見付かったそうだ。それが少女爆殺に使われた事も裏が取れた。」
「彼が異能を解除したんだ。これで国木田も放免される。」
『よかったにぇ。』
一先ず安心する乱歩と、再び乱歩に抱っこひもで抱っこされている名前。
「乱歩君。身代わり死体の顔であるが、傷から生活反応が出なかったそうである。つまり――」
ポオの話に、
「あぁ。彼は一人も殺していない。フュードルから貰った死体を落としただけ。多分、彼は今まで人を殺した事が無い。」
乱歩は空を見上げながら、そう告げた。
「何と……」
乱歩は顎に手をやり少し思案すると、
「乱歩君?」
虫太郎の乗せられたパトカーに歩み寄る。
そして一枚の社員証を虫太郎に差し出した。
「これは……?」
「棄てるのも面倒臭い。君にやる。」
「企業の社員証?」
不思議そうに社員証を受け取る虫太郎に、乱歩は告げた。
その企業が地下反政府組織の隠れ蓑である事。
其処に潜入中の特務課員が正体を暴かれる寸前の危機である事。
「……それを何故、私に?」
『しょのひと、たしゅけりゅ!』
「その捜査官は特務課の新人採用担当もしてる。」
乱歩と名前に云われ、ハッとする虫太郎。
そんな虫太郎に乱歩は背を向けると、
「僕は特務課が、どうなろうと知った事じゃないが、君の異能の強さを知れば三顧(さんこ)の礼で採用だろう。精々ふっかけてやれ。」
そう云った。
「乱歩君、君は……」
「約束したろ?困った時に仕事を紹介するって。」