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□傭兵と祈祷師
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コンコン、と響くノック音で目が覚める
どうやらあのまま、少しの間眠ってしまっていたようだ
(ウィラがお水持ってきてくれたのかな…)
鏡で顔を確認し、急いでドアに駆け寄る
「ごめん遅くな、って……」
勢いよくドアを開けると予想外の人物が立っていた
「え、ナワーブさん?」
「ああ、ちょっといいか?」
なぜここにいるのかという事と
フードを被っていないため、かなり戸惑ったが立ち話もなんだからと部屋に入ってもらう
「ほとんど試合に行ったから無理矢理頼まれた。ホラ、水と食料」
「ありがとうございます」
持ってきてくれたカゴをテーブルの上に置く
とりあえず喉が乾いていたため水を一気に飲んだ
その様子をじっと見つめられている
「……なんすか、そんなに見て」
「いや…気分悪いつって聞いてたから。大丈夫か?」
「やだ、優しい」
「うるせェ」
大袈裟に驚いて言うと、軽く頭を小突かれた
その箇所を擦りながらナワーブさんを見る
その頬には小さな傷
「……ああ言いましたけど、本当は感謝してるんです。助けられても逃げ切れる保証なんてないし。だったら私を見捨てて、皆さんだけで脱出して欲しかった」
話し出すと、少し怖い目でこちらを見る
「今回は結果として皆さんのおかげで逃げられました。でももし今後一緒になることがあれば、私の事は気にしないでください。私のために怪我するなんて馬鹿げてる」
私の代わりに誰かが傷つくなんて、あの時だけで十分だ
握ったままのグラスに若干ヒビが入る
部屋全体を重い空気が覆った
「…で、女性の部屋に突撃してくるなんてナワーブさんって意外とやり手?」
冗談っぽく言っても、彼の目が変わることはない
少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた
「襲われてるのが誰であろうと、1ミリでも可能性があるなら俺は助けに行く。目の前で仲間が殺られるなんて、もう散々だ」
その言葉に、思わず息が詰まる
彼が傭兵である事を思い出した
彼なりに悔やむ過去があるのだろうか
「…だから安心して怪我しろ。絶対助けに行くから」
そう言って優しく頭を撫でてくれる
ぶっきらぼうな顔とのギャップに笑ってしまう
「……怪我するのは前提なんですね」
「てめぇ鈍そうだからな。今日の試合、ハンターの接近気が付かなかったのか?」
「ぜーんぜん。無音で近づいてくるのに気づくのが難しいですよ、アレ」
私の返答に、ナワーブさんは
こいつ何言ってんだ?という表情をした
「え?」