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□傭兵と探鉱者
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「……」



なんとも気まずい空気が流れる私の部屋
ロビーくんと仲良く鬼ごっこしていたはずなのに、何故か2人とも無言だ
ズズ…とお茶を啜る音が響く



「あの……私になにか用があったんですよね?」



この空気感に耐えかねてナワーブさんに聞くと、黒い分厚い本をテーブルの上に置いた
題名は書かれていないが、ホセさんが持っていたものでどうやら日本のものらしい



「へぇ〜さすが航海士さんですね。どれどれ……」
「なんて書いてるの?全然読めないや」



ノートンさんが私の後ろから本を覗き込む
えらく密着している件については無視しておこうかと思っていると、ナワーブさんが引き剥がしてくれた

ぺらぺらとページをめくり文字を見る
確かに日本語で書かれているが、数ページほど読み進めていくうちに違和感が芽生える



「……あー、この本についてホセさん何か言ってました?」
「ん?アオイが喜ぶだろうって言ってたぞ?」
「アハハ…後で殴っとこうかな」



さらに数ページ読み進め、違和感が確信に変わる
ナワーブさんもノートンさんもかなり内容が気になっている様子だ



「で?なんて書いてんだ?」
「えっとー、簡単に言えば官能小説……エロ本っすね。しかもごっりごり濃厚なやつ」



その瞬間、部屋の中の時間が止まった気がした



「へぇ…俺もアオイとごっりごり濃厚なやつしたいなぁ」
「3Pで超ド変態プレイですよこの本。とりあえずホセさん殴りにいこうかな」



私が喜ぶヤツっていう認識が許せない
いやべつに喜ばない訳じゃないけど、むしろ全部読んでみたいけど、続き気になるけど!
悶々としているとナワーブさんが申し訳なさそうに本を閉じた



「悪ぃ、そんな内容と思わねぇから…後で殴っとくわ」
「いやん私も一緒に行きますよ」
「えーじゃあ俺も行く」
「アンタなんの恨みがあんだよ」



ノートンさんが後ろから抱きついてきた
ふわっと香る匂いが、あの時の事を思い出させる
恥ずかしくなり、軽くではあるが抵抗した



「……まぁいいや、お前らは何してたんだ?邪魔しちまったか?」
「うん、超邪魔された。いい所だったのにね?」
「……べつに試合の事話してただけですよ。いい所でもなんでもなかったので、そこはお気になさらず」



ピシッと言い切ると、少し安心したような表情を見せるナワーブさん
とりあえず一緒にホセさんに文句を言いに行くことになった
ちょうど話が終わる頃、ノートンさんは私を抱える腕に力を入れた



「ねぇナワーブ、分かってるよね?」
「ああ?お前こそ分かってんのかよ」
「?」



話の筋が全く見えないが、私越しにバチバチと睨み合う2人にとにかく大人しく座っていることしか出来なかった
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