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□ひげさんと祈祷師
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体が重い…
少し動く度に服に擦れる傷が痛む
エミリーさん曰く、大体一晩寝ればどんな傷も治るらしい

この荘園独特の効果なんだろう
不思議な場所だ、と改めて思う


(普通あれだけ血ぃ出たら死ぬよな…)



ロケットチェアで飛ばされたあと、気がつけば自分の部屋にいた
カートさんとイソップくんが担いで運んでくれたそうだ


「はぁ…情けない……」


包帯を巻かれた頭を触る
割とボッコボコにされた方で、ここ最近で1番の重傷らしい

傷の手当をしてもらい、しばらく1人にして欲しいと頼んだ

これだけの怪我をしているから、今日はもう試合は無いだろうとパトリシアは言っていた


(今日は、てことは明日はあるんだよなぁ…)


最後に見たハンターの表情が、まぶたの裏に焼き付いている
軽くトラウマになりそうだ


「……お水飲も」


痛む体を起こし、瓶に直接口をつける
まだ少し、血の味がする

はぁ、とため息をつくと
テーブルの上で寝ていたひげさんが目を開けた


「ごめん、起こしちゃったね」


そのおでこを優しく撫でる
気持ちいいのか、再び目を閉じた



撫で続けながら、先程のことを思い返す

今回も、守られてばかりだった
ウィリアムさんは、私を助けに来たばっかりに飛ばされてしまった
イソップくんだって、私を庇って怪我をした


(はやく強くなりたい、皆を守れるくらいに)


ぎゅ、と拳を握り締める
なんのための弓矢だ 祈祷師だ

悔しい、悔しい、悔しい

溢れ出る涙を、嗚咽を
抑えることは出来なかった
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