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□調香師と祈祷師
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ひげさんは再び布団の上で丸まった
というか、何故かこの部屋を気に入っているようだ
「井草の匂いが好きなんじゃない?私もこの匂いは落ち着くわ」
「そっか、畳だからか」
ウィラは小さな鼻をスンスンと動かしている
私が日本人だから畳の匂いに安らぎを覚えるのかと思っていたけど、どうやらそうでもないらしい
カチャカチャと調合している音を聞きながら、私はごろんと寝転がる
先程エミリーさん治療してもらった箇所の痛みが、かなり引いてきた
「ねぇ、ウィラの外在特質ってどんな感じなの?」
「そうね…私の場合は『忘却の香』『記憶喪失』『敏感』の3つ。人によって多少数は違うみたいだけれど…アオイは?」
「うーん、よく分かんない」
弓矢は多分そうなんだろうけど、他になにかあるかは先程の試合では分からなかった
「荘園の主から手紙届いてない?私は初めての時それで知ったけど」
「そんなのあるの?探さなきゃ」
昨日持ってきた荷物の中に、もしかしたら紛れ込んでいるのかもしれない
めちゃくちゃ大荷物だから、まだ開けてないけど
「ふふっ、荷物たくさんだから探すの大変そうね」
「あはは……(大半がお酒なのは黙っとこう)」
それからしばらく、静かな時間が過ぎていく
襲ってきた眠気と戦っていると、いい香りが漂ってきた
「ん、すごく好きな匂い」
「ほんと?よかったぁ…アオイ専用の香水。寝る時やスキンケアの時につけてあげると、リラックスできると思うわ」
可愛らしい瓶が私の前に置かれる
「ありがとう。お礼に今度何か祈るよ」
「どんなお礼よ…そろそろ昼食の時間だけどアオイどうする?調子悪いなら部屋に持ってこようか?」
何気なく言うウィラの顔を思わず見てしまう
なんで気分悪いのが分かったんだろう
「私も初試合の後はそうだったから。今日はもうゆっくりして?後で飲み物とか持ってくるから」
「うぅ……ウィラ大好き」
優しい言葉に甘えて、少し休ませてもらうことにした
ウィラに手を振り、1人になった部屋
窓の外は清々しい程の青空
だけど思い出すのは、後ろに立つハンターと攻撃を受けた時の痛み
「…こんなのが、ずっと続くの?」
おでこに手を当て、大きく深呼吸をする
何かを感じ取ったのか、ひげさんが寄り添ってきた
「……ちょっとだけ、ごめんね」
そのまま声を押し殺し、少しだけ泣いた