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□調香師と祈祷師
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部屋に戻った私は、エミリーさんに強制的に服を脱がされていた
問答無用と言わんばかりに身ぐるみを剥がされるが、布団の上で寝ているひげさんはピクリとも動かない


「ちょ、そんな大袈裟にしなくても…」
「ダメよ!傷口から細菌感染してしまうかもしれないんだから!」


手当をしてくれるのはありがたいけど
ハンターの攻撃で受けた肩の傷に、遠慮なく消毒液を塗られる


「ッ、いたい……」
「もう少しだから我慢なさい」


涙目になりながらエミリーさんを見ても手を止めてはくれなさそうだ
ガーゼやら包帯やらを手早く処置してくれる


「これで大丈夫。すぐに治ると思うけど、今日はあまり激しい運動はしちゃダメよ」
「は〜い ありがとうございました」


脱がされた着物を元に戻し、帯を締め直す
左胸の傷については何も言わなかった
敢えて触れなかったのだろう

エミリーさんが出ていったのと入れ替わりで、ウィラが入ってきた


「ん〜まだ消毒液のにおいが残ってるわね」


鼻を抑える仕草をしながら、差し出した座布団に座っている


「嫌いなの?このにおい」
「あまりね…だから試合中も治療を受ける時間が他の人よりかかってしまうの」
「へぇ〜そんなのあるんだ」


会話をしながら、ウィラはポーチからいくつか小瓶を取り出している
ひげさんは興味深そうに、すんすんと匂いを嗅いでいる


「マンダリン、ペパーミント、ユーカリ…これ全部アロマ?」
「ええ、アオイが好きな香りにブレンドしようと思って。慣れないことばかりで疲れているでしょう?」


そう微笑むウィラが、天使に見える
もともとの顔立ちも綺麗だから、まじで天使なんじゃないか


「ありがとう〜ウィラがいるだけで癒されるよ…次の試合は一緒がいいなぁ」
「やだ、今日の試合何かされた?場合によってはマーサに報告して奴らボッコボコにするけど?」
「あ、そこまで大きい事じゃないんだけどね」


小瓶の香りを嗅ぎながら、先程あったことを話す
主に試合後のことについてだけど


「ふぅん、イライやナワーブはともかく…ノートンがそんなのは珍しいわね」


選別した小瓶のアロマを調合しながら、ウィラは私を見た


「アオイのこと、気になってたりして」
「まっさかぁ〜」
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