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□荘園のルール
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「それじゃあまた明日、ゆっくり休むことだな」
「おやすみなさい、パトリシア」


夕食も終わり、男性陣とも一応一通り挨拶ができた
まぁ、あのサベダーさん?はそもそも夕食会場にいなかったから知らないけど

ウィラ達にお風呂に誘われたが
疲れたということもあり、今日は自室で済ませると断った

服を脱ぎ蛇口を捻る
冷たい水が出てきたため、温かくなるまで目の前の鏡を見る


「……はぁ」


本当はみんなと一緒にお風呂に行きたかった
でも、身体を見られたくないという気持ちが勝った

鏡越しに写るのは、左胸にある大きな傷跡
まだ幼い頃、兄の祈祷に同行した際
依頼人である芸妓さんに憑いていた悪霊に襲われたらしい

あまりその時の事を覚えていないのは、幼心に恐怖を閉じ込めたんだろう


(つっても何年前の話だよ……いい加減消えてくんないかな、傷)


温かいシャワーに打たれ、手短に身体を洗った
バスタオルを巻き付け、そのまま窓際にもたれ空を見上げる
窓を開けているため、夜風が当たって気持ちいい


「その格好だと、風邪引くよレディ」


渋い声がした窓の下を見る


「あー…えっと、カヴィンさん?」
「失礼、覗いているつもりは無かったんだが…」


ちょうど私の部屋の向かいにベンチが置かれている
どうやらそこで夜涼みしていたようだ


「あはは、ごめんなさい。次からは気をつけます」
「いやまあ私としてはいいんだが、うん」
「やだ、じゃあもっと見せてこうかな」


バスタオルを外すような動作をとると
少し慌てた様子のカヴィンさん


「冗談ですよ。いくらなんでも初対面の男性に裸見せませんて」
「あまりからかわないでくれ。冷えてきたしもう戻るとするよ」


おやすみなさい、と挨拶をしてやっと下着を身につける
ポスンと布団に寝転ぶと
いつの間にやら、ひげさんが部屋に入ってきていた


「……君は不思議な猫だね」


聞こえているのかいないのか
ゆっくりと目を閉じるひげさん

その寝顔を見ていると、いつの間にやら私もうとうとしてしまった
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