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□恋敵と祈祷師
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みんなが出ていって一人の部屋
気が抜けたのかなんなのか
一気に疲労と痛みが襲ってきた
声にならない声で呻き、なんとか寝返りをうつ



「……どうしようかねぇ」



目を閉じ考えるのはこれからの事
とりあえずリッパーとの試合は今日みたいな事になるだろう
自分が痛いだけだから、それはまぁ良いとして



(ナワーブさんと、ノートンさんなんだよなぁ……)



ああああと頭を抱える
こんな狭い環境で、自分がしてしまったことの大きさを悔やんだ

もしナワーブさんが好きならノートンさんとの事はきっちりしておかないといけない その逆も然り
こんな時、兄さんに相談したらどう言うだろうと考える



「……ロクな答え返ってこないか」



目を閉じ深く息を吐いた
秒針の音が、無音の部屋に響く
しばらくの間それを聞いていたが誰かが訪ねてきた
動けないため声だけで返事をするとゆっくり開くドア



「……大丈夫ですか?」
「イソップくん…?」



心配そうに、寝ている私の顔を覗き込んでいる
予想外の訪問に私は上体を起こすが無理しないでと制された




「イライさん達が騒いでいたので、念の為様子をと思って」



見に来ました、と座布団で眠るひげさんを撫でている



「もし貴女に何かあっても、綺麗に化粧してあげますからね」
「……そう簡単に死にませんて」
「すいません、一種の職業病なので」



にっこりと目元で笑うイソップくん
丁寧にお断りすると少し残念そうな様子を見せた
そんな彼を慰めるかのように、ひげさんが膝に乗っかっている



「…まぁ冗談は置いておいて、ナワーブさんがすごく心配していましたよ」



その言葉に思わず息が詰まる
イソップくんは、なんやかんやナワーブさんとのことの一抹を知っている人物だ
わざわざ彼が訪ねてきたということは何か理由があるんだろう



「今日の試合、リッパーですよね。ソレ」



包帯に巻かれた腕を指す
それに頷くと、彼はふぅと息を吐いた



「余計なお世話ですけど…度を超えた怪我を負うと、もうここに戻ってこられないかもしれない。前居た日本人のように」



さらりと言うイソップくん
私は思わず起き上がるが、激痛が全身を巡る



「痛ッ……」
「ああもう、無理しないで下さいよ」
「ごめんごめん…っていうか今の話」



痛むお腹を抱えながら先程の言葉を脳内で繰り返す
前にも日本人がいた…彼は確かにそう言った



「ええ、まぁその人は男だったみたいですけど」
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