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□傭兵と探鉱者
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「おーおー飲むねぇナワーブ!勢い衰えねえな!」
「うるせぇ黙って付き合えウィル」



夜の試合は無く、同じく筋トレしていたウィルを誘って酒を飲む
アイツは試合にいってるから変な心配はしなくてよさそうだが



(なんだよ、変な心配って……)



ノートンの言葉を思い出し8割りほど入っているグラスを天に向ける
度数が低いためか、先程から全然酒が回らない
ゴン、とグラスを置いた机から鈍い音がした



「なぁんか嫌なことあったか?」
「べーつにー」
「ふぅん」



追加の酒を注ぎ、再び乾杯一気する
それを何度も繰り返しているうちに元々そんなに強くないウィルが机に突っ伏した



「……こいつにしては長く付き合ってくれた方か」



すぐに気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた
それを聞きながらグラスの中の氷を揺らす
カランカランと響く音が心地いい



「……もうやっちまってんのかー」



ハハ、と乾いた笑いが込み上げる
酒は回らずにその事実がぐるぐると回り耐えきれなくなりそうだ



「うわ酒くさっ」
「しかも汗臭いわよ。お風呂まだなの?」
「げ……なんでいんだよ」



声が聞こえた方を見ると、一升瓶を片手にしたフィオナとウィラが立っていた
瓶には見たことの無い文字が書かれている



「アオイに貰ったお酒飲もうと思って。アンタも飲む?」
「………………飲む」
「やだ、素直じゃない。いつもそうだと可愛いんだけれど」



俺に嫌味を言いながらも、なみなみと酒の注がれたグラスを差し出すウィラ
フィオナは手際よくツマミを並べている
とりあえずグラスを合わせ口をつけるとほのかな甘みが口内に広がった



「うわぁ美味しい。さすがアオイ、好みわかってる」
「荷物の大半お酒だったのには引いたけどね」



確かに酒ばっかだったなぁと、アイツが来たばかりの頃を思い出す
初対面こそ悪態をついちまったが会う度によく笑う奴だと思い始めた
2人の会話を聞き流しながらも酒を飲むペースは変わらない
話題は今日の試合についてらしい



「もうほんと、ノートンかっこよかったよね」
「彼のおかげで勝てたものね。あーあ、どっかの傭兵さんにも見習ってほしいわ」
「…悪かったな誤爆しまくってよ」



「あらヤダ分かってるじゃない」と口に手を当てるウィラ
女じゃなかったらグラスの酒を一気させるところだ
2人の顔がほんのり赤くなるまで待ち、気になっていたことを尋ねる



「なー、ノートンってやっぱ女から見たらかっこいいの?」



俺の質問に間髪入れず答えたのはフィオナ
酒に強くないらしく、もう若干呂律が回っていない



「かっこいいわよ!高身長で物腰のやわらかさ、ピンチの時に助けてくれるし笑った時のあのハニカミ笑顔!女で嫌いなやついないわよ!」



へぇ、とグラスに口をつける
まぁ身長高ぇーし男らしさは同じ土俵に立てない気がする
そんな俺の様子を見てウィラがこう続けた



「アオイは彼のこと、お兄さんみたいって言ってたわよ」



その言葉に飲みかけの酒を吹き出してしまった
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