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□納棺師と祈祷師
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僕以外誰も起きていないと思っていた時間
入浴も済ませ、廊下を歩いていると暗闇の中にアオイさんが立っていた

なぜか、窓に向けて腕を伸ばしている
新月で暗いはずなのに、不思議と彼女の姿ははっきりと見えた



「いそっぷくん……びっくりするから……」



オバケかと思ったじゃん、と笑っているが
僕からしたら髪をおろして和服姿のほうが、そういう存在に近いと思った

ちょうど気になることもあったし、夜中だから誰もいないだろうとラウンジに誘う
ビールを勢いよく流し込んでいる姿は、多分僕より男らしい



「イソップくんはお酒は?」



豪快な飲みっぷりに圧倒されていると、こちらを見て微笑んだ
手では2本目の栓を開けている



「僕は飲まないですね。飲んだとしても、付き合い程度です」
「へぇ、飲めないわけじゃないんだね」
「……」



何故かグラスに注がれたビールが差し出されている
アオイさんは何を言うわけでもなく、そのままの笑顔だ



「ハァ……これだけですよ」
「ありがと〜乾杯」



それから少し会話をして、気になっていた事を尋ねる
ナワーブさんの名前を出すと、ちょっと動作が止まった



「あー…なんか聞いたの?」
「ホセさん達が、レイプがどうのこうのって騒いでたので…まさかと思って」
「あはは…レイプはしてないから安心して。そこまで肉食じゃない、と思う」



ほわっと語尾を濁すあたり
全く違う訳じゃないんだろうか

問い詰めると、少し前に酔ってるナワーブさんにキスしてしまったと白状した
寝たフリしている姿が、飼っていた犬に似ていたんだとか



「まぁ、とりあえず謝罪はしたから…多分解決したと思いマス」
「なんですかモヤっとする言い方」
「う……だってダブハンの後ナワーブさん口きいてくんなかったもん……」



童貞かよぉ、と膝を抱えている
その仕草と言動におもわず笑ってしまう



「へぇ、面白くなりそうですね」



どうやらノートンさんがアオイさんのことを気に入っているらしい
僕自身そういう事に全く興味はないが、目の前で頭を抱えて唸っている姿は可愛らしいと思う



「うぅ…どうしようイソップくん」
「さぁ?もう1回してみたらどうです?」
「……面白がってるでしょ」
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