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□記録と祈祷師
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「ここって、モウロさんのいた部屋…?」



翌日、動けるようになった私は
予め聞いていた場所に足を運んだ
傷は少し痛い位にまで回復したため動ける

部屋に入った私は本棚の背表紙を指でなぞり、適当に手に取った
イソップくんの言っていた通り、それはこの荘園での記録…日記のようなものだった



(……何か分かるかもしれない)



昨日、彼は多分「あまり無理をするな」的な忠告をしに来てくれたんだろう
そこで聞いた衝撃の言葉



(過去に日本人がいた…しかも男…)



ぺらぺらとページをめくる音のみ響く空間
読めない文字もいくつかあるが、大まかな内容はなんとなく分かる



「何か調べモノ?」
「うわぁビックリした」



手元の本を覗き込むように、いつの間にかモウロさんが立っていた
部屋に入る時は誰もいないと思ったけど…
本を閉じ後ろを振り返る



「ええ、ここにくれば荘園の記録があるとイソップくんに聞いたので…」
「そういえば彼もよく来ていたカラ」
「そうなんですね、私もう少しここにいても?」
「かまわないヨ、僕もう試合だからネ」



じゃーね、と部屋を出ていく後ろ姿を見送り再び本に目線を落とす
何か兄さんに繋がる手がかりが見つかれば…

太陽の光が差し込む薄暗い室内で刻々と時間は過ぎていった












「あーナワーブ!ちょっといいかしら」



試合後、傷の手当をしているとウィラに呼び止められる



「なんだよ、またパシリか」
「よく分かっているじゃない。でも残念、今日はアオイじゃないの」



知ってか知らずかアオイの名前を出す



「じゃあパス」
「やだぁ素直」



俺の行く手を阻むように立つウィラ
断る事は無理だと観念し、腕を組む
手渡されたボードには回覧板の文字
ソファに座り、それに一通り目を通していると何故か隣に座ってきた



「……なんだよ」
「ねぇ、一昨日の夜、誰か訪ねて来なかった?」



ニヤニヤという言葉が当てはまるような笑顔
その様子を見て、俺は頭の中でひとつの結論を出した
あの小瓶にアオイが夜中に来たこと…



「……てめぇか」
「あら、単独犯じゃないわよ?」
「…………」
「その様子を見ると素敵な夜だったようね。安心安心」



怖い顔しないで、と微笑みながらウィラは部屋を出ていった
複数犯という事は大体メンバーの予想がつく
深くため息をつき、膝に置いた回覧板に再び目を向ける



「……新ハンターか」
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