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□恋敵と祈祷師
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「アオイ、あと何割くらい?」
「あと2割ですね。ここはもう大丈夫ですよ」



試合中
やはりいきなり声をかけられるのには驚くが、かなり慣れてきた
イライさんは少し離れた暗号機まで行ったようだ



(多分もうすぐヘレナのところが終わるから…イライさん手伝いに行くか)



手元の解読が終わり、残り2台である事を確認
先程イライさんが走っていった後を追う
チェイスをしているのはパトリシア




「ありがとう、助かるよ」




イライさんに追いつき2人で暗号機に触れる
3段階ほど音が変わったところで腕を引かれた



「心音してる。多分こっちに来たんだろうから…一旦離れよう」
「分かりました、私が引き付けますね」



とは言ったものの今回はハンターと相性が悪い
いや相性というか…なんだろう



「まーた貴女ですか。とことん目障りな蝿ですね」
「どうも、退屈しのぎにはなるでしょう?」
「これはまた変な自信がついたようですね」



へし折ってやります、と爪を振り上げるリッパー
パトリシアが頑張ってくれたおかげで矢は3本とも残っている
後ろを確認し工場内に駆け込んだ
ぐるぐると窓枠を使いながら逃げるも、やはり限界を迎える



「あまり調子に乗らないほうがいいですよ?貴女鈍臭いんだから」
「いたた…心が痛い…」
「そうですか。なら早く楽にしてあげないと」



吊る時に、にっこりと笑った気がした
3人が逃げてくれたら充分だと思う間も茨が腕に喰い込み血が滲む
残り1台だが距離も遠いため誰も助けに来ないだろう
今の私の仕事は、コイツを引き留めておく事



「ねぇリッパーさん、お話しない?」



通電の音と重なる私の声
瞬間移動を持っていたようで遠くのゲートを見ている



「貴女と無駄話している暇はない」



狙いを定めたらしい黒いモヤがリッパーを覆う
ノーワンのまま皆の所に飛ばすわけにはいかない



「ナワーブさんのことだけど……!!」



咄嗟に出た言葉にリッパーの動きがピタリと止まる



「…………ほぅ?」



爪が椅子の背もたれに突き刺さる
少し掠めた頬から血が流れた



「それは貴女を殺してもいいと、そういうことですか?」



人差し指であろうか分からないが
鋭い爪が私の口元に触れる
目の前の殺意に、冷や汗が流れた
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