main

□納棺師と祈祷師
1ページ/3ページ




「はぁ〜〜〜気持ちいい〜〜〜」



今日も一日無事に終わり、皆が寝静まった頃を見計らってお風呂にやってきた
部屋にあるシャワーだけじゃ疲れが取り切れない

広い湯船の中で、うんと腕を伸ばす
まさか温泉に入れるなんて思ってなかったし、すごく嬉しい



「それにしても疲れた……」



今日の試合を思い返す
新たに出会った写真家のドSな笑みが忘れられない…たぶんえげつそう……
ハンターもまだまだいるってことか

ぼーっと天井を見つめていると、眠くなってきた
このままここで寝たら笑えない事になるため、さっさと上がり服を着る



(今日は新月か…不気味だなぁ)



髪を拭きながら廊下を歩く
闇に溶け込んだ窓の外には、人ではないモノが蔓延していそうで
職業柄仕方のない事ではあるが、その闇に向かって手を伸ばす



「…アオイさん?」
「ぅいッ!?」



いきなり耳元で名前を呼ばれ、心臓が一瞬止まった



「いそっぷくん……びっくりするから……」
「すいません、そんなに驚くと思わなくて」



マスクを上げ直している彼の手には、私と同じくタオルが握られていた



「イソップくんも今お風呂?」
「ええ、人がいない方がいいので」



そう言いながら、綺麗な銀の髪をわしゃわしゃと拭いている
髪をおろしている雰囲気が、どこか色っぽい
思わずその容姿に見とれてしまう



「…アオイさん、ちょっと話しませんか?」



社交恐怖と聞いていた彼からのお誘いに、多少驚きながらも首を縦に振った












場所は変わって、ラウンジにやってきた
イソップくんは水、私はビールを手にソファに座る



「……」
「これは睡眠導入剤だから。そんな目で見ないで」



冷ややかな目線を頂きながら、ビールを飲む
うん、風呂上がりの体に沁みるぜ

少しの間、お互い水分補給をして息をつく
キャンドルの明かりが揺れた
その向こうに座る銀の髪を見つめる



「綺麗だよね、イソップくんの髪」
「そうですか?あまり気にしたことはないですけど」



おろしたままの髪をくるくると指で弄んでいる



「ん、なんか色っぽい。女の人が放っとかないでしょ?」
「僕は人と一緒になる感覚が理解出来ないので興味はないですね」
「えーもったいない」



そんなことを言うから、思わず少し大きい声をだしてしまった
かっこいいし色気あるし背高いし…モテる要素しかないのになぁ



「私の国だと、イソップくん揉まれに揉まれてると思うよ」
「アオイさんの国に生まれなくてよかったかも」
「あはは、そうかも」



そう笑っていると、ふいにイソップくんが真剣な目になった



「個人的な興味ですけど、ナワーブさんと何かありました?」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ