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□浴衣の君
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【ジャポネーゼ夢主です】
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。」
「何ですかそれ。」
特に仕事もなくアジトで留守番をしていた時、唐突にエルマが呟いたから、僕は彼女の方を見た。
エルマは僕の方を振り返ると人差し指を立てた。
「日本の格言?ことわざ?
とにかく、大和撫子を表した言葉よ!
ジャポネーゼは立ち居振る舞いが花のようだってこと!私を見てたら納得でしょ?」
「ヤマトナデシコ、ねえ……。」
僕の目の前でドヤ顔をしている彼女の普段の振る舞いをを見ていたらとてもとても……。
「エルマの場合、『立てば格闘、座ればご飯、歩く姿は10歳児』ってとこじゃあないですか。」
「ちょ!フーゴ!何よそれ!!」
「あっはっはっは!違いねえや!
フーゴ上手いこと言うじゃあないか!」
怒りだすエルマと僕の言葉を聞いて涙を流して笑うミスタ。ミスタにまで笑われてエルマはすっかり機嫌を悪くしたようだった。
「覚えてなさいよ。」
「大丈夫ですよ、僕は記憶力はいいんです。」
「きー!!何よIQ152!!!」
「はいはい、じゃあそろそろ食事でも行きましょう。」
ぷりぷり怒るエルマも可愛いなと思いながら、僕はミスタと共に彼女を促して外に出た。
僕はエルマに密かな恋心を抱いていた。彼女は誰にでも気さくに話すし、それだからブチャラティやアバッキオも彼女を可愛がっているのが分かる。
単なる同僚に過ぎない僕たちの関係に僕は少しだけ焦れていた。
「ねえフーゴ、浴衣って知ってる?」
「ユカタ?」
「ジャッポーネのキモノみたいなものですよね。」
リストランテに行くと外出していたブチャラティとアバッキオ、ナランチャとジョルノも合流していつもの賑やかなランチが始まった。パスタを食べながらエルマが僕に話しかけてきたが、耳慣れない言葉に聞き返すとジョルノが話に入ってきた。
「そうそう、それでね、荷物に入っていたのを出してみたら着たくなっちゃって。一人で出かけるのもなんだし、フーゴ、デートしましょ。」
「はあ?何言ってるんだあんたは。」
皆の前で突然の話に混乱して僕はカトラリーを取り落としそうになった。当のエルマはニコニコして特に気にしているわけではなさそうだったから、それに腹が立って勢いよく頷いた。
「いいですよ。」
「やった!じゃあ今夜、迎えに来てくれる?エスコートしてね。」
「わかりました。」
ナランチャとミスタが囃し立てジョルノが何か言っていたが、僕は突然降ってわいた好機に頭がいっぱいでそれどころではなかった。
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