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□gelosia
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「すまないエルマ、遅くなった!」

慌ただしくブチャラティが彼女の部屋にやってきたのは午後11時を回った頃だった。ソファで微睡んでいたエルマはハッとして起き上がるとブチャラティにぎゅっと抱きついた。

「おかえりなさ……。」

頬を寄せた彼の胸からいつもの香りに混じって香る甘ったるい匂いにエルマはビクリとして固まった。抱き返してくるブチャラティの腕からそっと離れる。

「お疲れ様。おなか、空いてない?」
「ああ、付き合いで食ってきたから大丈夫だ。」
「そっか。」
「どうかしたのか?」
「んー、眠くなっちゃったみたい。お風呂入ってきて。」
「ああ。」

エルマの態度に不思議そうにするブチャラティをバスルームに見送って 、エルマはすっかり冷め切った料理を冷蔵庫にしまった。

「最低だな私。」

こんなに遅くなったのにブチャラティはちゃんと自分のところへ帰ってきてくれたではないか。疲れているはずの彼にとる態度ではないのは彼女自身でも良く分かっていた。
頭を振って、エルマはひとつ大きなため息をついた。



「今日、見かけたよ。あの大きな交差点の所で。」
「近くにいたのか?」
「うん、買い物してた。」

風呂上がりのブチャラティに飲み物を出してやりながらエルマはそれとなく話を切り出してみた。

「お偉いさんのお嬢様ってやつさ。どうしてもって頼まれてエスコート兼護衛役を仰せつかった。」
「綺麗な人だったね。」
「……妬いてるのか?」
「別に、そんなんじゃ。」

ブイと顔を逸らすエルマを見てブチャラティは立ち上がり彼女を抱きしめた。

「君に妬かれて嬉しいって言ったら怒るか?」
「ブローノ?」
「Buon compleanno エルマ。
まだ日付は変わっていなかったな?」

言われたエルマが時計を見たらあと1分で0時になるところだった。

「どんな美女だろうと金を積まれようと、オレの帰る場所はエルマ、君の所だけだ。」
「ほんと?」
「汗の味を見せてやりたいところだが。」
「私には分からないわね。」

それまでのどこか硬い表情を崩してふふふと笑ったエルマに、ホッとしたようにブチャラティも微笑んだ。

「この埋め合わせはどうしたらいい?オレのプリンチペッサ。」
「じゃあ、貴方の時間が欲しいわ。丸一日私に付き合って。」
「物をねだられるより難易度が高いな。
分かった、調整する。」

ぎゅう、と自分に抱きついてくるエルマを抱きしめ返してブチャラティ は言葉とは裏腹に嬉しそうな声音で頷いた。

「愛してる。」
「私も。愛してるブローノ。」

愛おしそうに二人の視線が絡まり唇が重なる。一つになった影はいつまでも離れなかった。


gelosia
嫉妬
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