Short

□Arrivederci
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ブローノから連絡が途絶えて何日になるだろう。しばらくネアポリスを離れるとだけ言い置いて彼は行ってしまった。
仕事の内容までは聞いていないけれど、私はそれが危険なものじゃあない事を祈るしかできないでいた。

仕事が休みだった今日、うたた寝をしていたらうっすら聞こえたノックの音にだるい身体を起こしてドアに向かう。時計を見たらもう夕方だった。

「はい、どなた?」
「エルマ?オレだ、ミスタだ。」
「ミスタ?」

珍しい人が来たものだ。私はすっかり目が覚めてドアを開けた。

「Ciao、ミスタ……と、そちらは?」
「Ciao、エルマ。ああ、こいつらは。」

ミスタの後ろに見たことのない少年少女がいた。特徴的な前髪の男の子とピンクの髪が可愛い女の子。
ミスタが連れてきたところを見ると、この子達もギャングなんだろうか。

「エルマは初めてだったよな、ジョルノにトリッシュだ。」
「はじめまして、ジョルノ、トリッシュ、エルマよ。
……ここじゃなんだから、とりあえず入って。」
「すまねえな、お邪魔するぜ。」

三人をキッチンに通してお茶の支度をする。お湯が沸くまで様子を見ていたけれど、三人の表情は固かった。
ブローノからは相変わらず連絡がないのに彼のチームの人が来た。それが意味するものを考えて不安がじわりと胸に広がる。

「何もないけど、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「いただきます。」

紅茶とクッキーを出して私も席に着いた。ジョルノとトリッシュが礼儀正しく挨拶して紅茶を飲むのを見て、私はミスタに目をやった。

「どうしたの急に。うちに来るなんて珍しいじゃない?」
「いや、それなんだがな。」
「ミスタ、ちゃんと説明しなくちゃあダメです。僕から話しましょうか。」

言いにくそうにミスタが視線を逸らすと、それに気付いたジョルノがカップを置き、私に向き直った。

「エルマ、失礼ですが、貴女はブチャラティの?」
「……ええ、この間届けを出したばかりだけど。」

ジョルノが私の左手の薬指を見て尋ねた。ブローノの瞳のように蒼い小さな石の入った指輪が控えめに輝いている。

「そうですか。単刀直入に言います。
ブチャラティは亡くなりました。」
「え。」

ブチャラティハナクナリマシタ

たったそれだけの文字列が頭に入らない。呆然としているとジョルノの横でトリッシュが泣き出した。

「ごめんなさい、私のせいで、ブチャラティは……!!」
「トリッシュ?落ち着いて、どうしたの?ジョルノ、どういう事なのか詳しく聞かせて。」

泣いているトリッシュを宥めながらジョルノを見れば、ジョルノもミスタも悔しそうに眉を寄せていた。
そしてジョルノの口から聞かされた長い長い話に、私は再び呆然となった。

「そう、だったの。どうりで連絡が取れないと思ったわ。」
「大丈夫ですか?顔色が悪い。」
「大丈夫、じゃあないかもしれないけど、まだ実感がないみたいなの。」

ジョルノに心配されて私は冷めた紅茶を飲んだ。

ブローノが死んだ。

ギャングだった彼。いつかは来るかもしれないと思ってはいたけれど、こんなに早いなんて。

「……彼に会える?」
「ああ。」

深呼吸してミスタに尋ねれば、彼はゆっくり頷いた。

「連れて行って。」

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