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□かんちがい
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穏やかな昼下がり。オレは外出先からアジトへと戻った。午後は予定がないからエルマと早めにディナーでも行こう。そう考えながらドアに手をかけようとした瞬間、漏れ聞こえた声にギョッとして動きが止まる。
「……っあ」
「ここですか?」
小さく聞こえてきたのは可愛らしい恋人の声と、新人ジョルノの声。
「あ〜気持ちいい……ジョルノ、上手ね」
チームが集まるアジトで何してんだ。心臓がうるせえ。頭に血が昇る。
「ふふふ、気持ちよさそうですね。じゃあこっちも?」
「ああ〜、そこそこ!」
「何やってんだお前ら!」
しばらく様子を見るなんざできなかった。オレはドアを蹴破らんばかりにして室内に入る。
「あー、アバッキオお帰り〜。どうしたの慌てて?」
「お帰りなさい。何かありましたか?」
「何っててめえオレの女に……」
呑気そうな声を上げてエルマがオレを振り返る。幸いというべきか、想像していたような破廉恥な光景は広がっておらず、ソファに座る二人はきちんと衣服を身に付けていた。
「今ね、ジョルノに肩揉んでもらってたの。最近疲れてたから気持ちよかったー!」
「肩」
「うん、軽くなった!」
立ち上がり腕をぐるぐる回しながら彼女が近付いてきた。ジョルノをみれば可笑しそうに笑いを噛み殺している。
こいつ、分かっててやったな。
「……そうかい」
「あ、ねえねえ、アバッキオもやってもらえば?ジョルノ上手だよ!」
「いいですよ?ここに座ってください」
ジョルノが面白そうにぽんぽんとソファを叩いた。オレはエルマの手を取ると大股でドアへと向かう。
「ふざけんな。おい、行くぞ」
「行くってどこへ?もうすぐブチャラティも帰ってくるって言って」
「ジョルノ、オレたちは帰る。ブチャラティにそう言っとけ」
「分かりました。気を付けて」
ひらひらと手を振るジョルノを睨み付けてオレはドアを閉めた。
「どうしたのアバッキオ。さっきから怖いよ」
通りを歩きながらエルマが抗議の声を上げる。オレは黙ったまま人気のない路地に彼女を連れ込み荒々しく唇を奪った。
「っは、ちょっと、急に何」
「あいつに触らせてんじゃあねえ」
「え?」
睨みつければエルマは目をまんまるくした後で嬉しそうに笑い出した。
「何それ、やきもち?」
「うるせえ」
きゃらきゃらと笑われて、激昂した自分が急に恥ずかしくなり顔を背けた。その頬にエルマの小さな手が添えられて彼女の方を向かされ、優しく唇が重なった。
「心配かけてごめんね」
「もうやらねえか」
「うん、次からはあなたにしてもらいたい。アバッキオ、手がおっきいから気持ち良さそう」
「へえ、いいぜ」
ニヤリと笑えば変な事考えないでよと小突かれた。さあなと適当に返事をして彼女の肩を抱く。
「早速今からしてやろうか」
耳元で囁けば真っ赤になるエルマを抱き寄せて家路を急いだ。お前のいい所をようく解してやらねえとな。
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