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□2019年8月拍手log
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「久しぶりだな、マサラタウン。」


僕はマサラタウン出身のシゲル。少し前にこのマサラタウンをポケモントレーナーとして旅立ったが今はポケモン研究者になるために各地方の研究所を回って勉強している。今やっている研究が落ち着いたこともあり、今日は久しぶりにマサラタウンに戻ってきた。

僕には幼なじみが二人いる。一人は単純で昔馬鹿にしていたサトシ。アイツは今どこを旅してるんだろうな。それともう一人、いつも僕の後を追いかけて来た気の弱くてドジな女の子のユウキ。昔の僕は意地悪で彼女が僕のことを好きなのを知ってて他の女の子たちを連れ回して遊んでいた。


(『シゲル、まって!私もつれてって!』)
(「やーだね、トロいキミはサトシと遊んでればいいじゃないか、さぁさぁ行こう美しいガールフレンドたち!」)
(『…シゲル…』)


僕も子供だったなぁ…彼女を泣かせてサトシが慰めて本当にサトシと遊んでるのを見たら彼女の三つ編みを引っ張って更に泣かせたっけ…そんなことを思い出してマサラタウンに帰ると町の様子がガラリと変わっていて目を見開いてしまった。
町の至る所にユウキのポスターがデカデカと貼られているんだ。しかもマサラタウンをポケモントレーナーとして旅だった最後の日に見た三つ編み姿のユウキではなくて、三つ編みは編み込みに変わり、長かった彼女の髪はセミロング位にまで短くなっていた。


「!?な、何だコレは…!?」

「あら、シゲルくん!久しぶりね!」



ポスターを見て愕然としている僕に声をかけてきたのはサトシの母親でもあるハナコさんだった。買い物かごを持っているから恐らく買い物帰りなんだろう、なんて分析しつつも、頭の中はユウキのことで混乱状態だ。



「マサラタウンに帰ってきてたのね!サトシも帰ってきてたら良かったのに〜。ポケモンの研究は落ち着いたの?元気にしてた?」

「あ、は、はい…あの、ハナコさん。…このポスターは…?」


僕が指さしてハナコさんに聞くとハナコさんはああ!ユウキちゃん!?と嬉しそうに話してくれた。


「すごいわよ!あの大人しくて優しいユウキちゃんが今やマサラタウン出身の大人気のポケモンコーディネーターになってるの!コンテストリボンもたくさんゲット出来るようになったみたい!おばさんも応援してるの!」

「大人気、ポケモンコーディネーター…?あの、気弱なユウキが…?」



頭を抱えたくなった。ポスターの中の彼女は僕の記憶にある泣き虫な彼女の表情ではなく、キラキラとした笑顔で自身のポケモンであろうエーフィと一緒に写っている。



「すごいのよ、ユウキちゃんもユウキちゃんのポケモンも!今はグランドフェスティバル目指してリボンも結構集めてるみたい!シゲルくんも応援してあげてね!それじゃあおばさん、そろそろお夕飯の支度しなきゃいけないから帰るわね、あ、オーキド博士にカボチャの煮物お裾分け届けてるからシゲルくんもよかったら食べてね!」

「あ、ありがとうございます…」



ハナコさんがその場を去った後、僕は眩暈がしてその場にしゃがみ込んでしまった。いつも僕の後をつけていたユウキが、大人気ポケモンコーディネーター……い、いや、そんなことはどうでもいい、むしろあのユウキが旅をしていることの方が問題だ!あの気弱で泣き虫がポケモン同伴とは言え一人で旅しているのか!?ダメだ危険すぎる!あれでも一応ユウキは可愛い。小さい頃は地味だったから気付かない奴も多かったがよく遊んでいた僕とサトシは知っている。あの恋愛に鈍いサトシですらユウキは可愛いと言っていたくらいだ。そんな女の子が一人旅なんかして取って食われても文句は言えないくらい危機管理能力が低い!いや、むしろ一人旅していると言い切れるのか?もう別の男と旅をしている可能性だってある。彼女に下心を抱く輩もいるかもしれない。そんなことをぐるぐると考えていると僕の足はオーキド研究所とは真逆の方向に歩み始めた。


重たい足取りのまま向かった先はユウキの家。思い返せばユウキの誕生日ですらあの時の僕は照れ臭くて他の女の子たちと遊びに行ってしまった。それでもユウキは他の女の子たちと先に約束しちゃったんなら、しょうがないよね、ってすごく辛そうな顔で無理に笑ったことを思い出した。どこまで最低なんだ、僕は…今更ユウキにどんな顔で会えばいいんだ…
帰ろう。そう思って足を反対に向けると家の中からユウキの母親であるナツコさんが出てきた。


「あら、シゲルくん!?久しぶりね!」

「お久しぶりです…ナツコさん…」

「ユウキに会いに来てくれたの?でもごめんなさいね、今あの子ホウエン地方旅して次はシンオウ地方へ行くって今朝旅立ったばかりなの。」

「え!?昨日まで居てたんですか!?」

「ええ。あ、シゲルくん、これ、もしシゲルくんが帰ってきたら渡して欲しいって言われてたの。」


ナツコさんに渡されたものはコンテストリボンだった。


「初めて大会で優勝したリボンなんですって。いつ会えるかわからないからシゲルくんがマサラタウンに帰ってきたときに渡して欲しいって言ってたわ。」

「…ナツコさん、僕、行きます!」

「あ、シゲルくん!お茶でも飲んでいって…」



僕はナツコさんの言葉も聞かず、オーキド研究所にも戻らずマサラタウンの出口を出た。

















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