4冊目
□191歩目。
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「あうっ!」
エーフィとエネコを置いたまま引きずられてきた私は手を離されたと思ったら乱暴に地面へ投げ捨てられた。固くて冷たい石の感触。しかし何故かそれがベッドのように見え、オマケに何か細かい装飾が施されていたことからこれは生贄を寝かせるための祭壇なのではないかと思いみるみる血の気が引いていく。すぐに逃げようと試みるも偽シゲルが私のお腹の上に乗り、自身の身体で私の身体を抑えつけた。
『逃げられないよ、清らかな魂の女の子。』
偽シゲルにそう言われ、私は目を見開いて、それでも落ち着いた言葉で問いかける。
「どうして私が女だってわかったんだい。」
私が冷静にそう問いかけたが偽シゲルは本物のシゲルとは違った気持ち悪い笑顔で私のパーカーを掴んでこう言った。
『そりゃあキミからメスの匂いがするからね。』
「Σひゃっ!?///何するんだ!!」
偽シゲルは私のパーカーをグイっと乱暴に脱がせ下に着ていた水着を指さしてほらね、と性別を確認するように笑い、奪い取ったパーカーを見せつけてきた。このゲス野郎…!足が動かせられれば顔面でも股間でも何でも蹴飛ばしてやるのに…!私はきっと偽シゲルを睨んでいると偽シゲルは私の手を片手で一纏めにして拘束してニタニタと嫌らしい笑みを浮かべている。
「この変態…!ゲスお化け!」
『酷いなぁ、僕のこと嫌いなのかい?』
「ええ、嫌いよ!アンタなんて大っ嫌い!!」
私がハッキリそう言ってやると偽シゲルは私を見て首を傾げる。
『変だな………キミの心を覗いて一番好きな人に変身してるのに……何で僕に魂をくれないんだ……人間は愛する人のためなら命だって差し出すって今までずっと成功してきたのに…』
「一番好きな人……?」
私は偽シゲルの言葉に一瞬戸惑った。コイツは今確かに私の一番好きな人と言った。私はその言葉を聞いて大笑いした。
「っ…ふふっ、あははっあはははっ!」
洞窟の中に響き渡る私の笑い声。それを聞いて驚いたのは偽シゲルの方だった。
『何がおかしい!?気でも狂ったか…「バッカじゃないの!?アンタ!私の一番好きな人に化けたって?だから何なのさ!」
『何…?コイツはお前の好きな男じゃないのか!?』
コイツになんか負けない。絶対に負けたりなんてしない。そしてそれを本当に伝えたい人に伝えるために私は認めなければならない。私は偽シゲルを煽ってハッキリ言ってやった。
「あははは!…洞窟のオバケがどんなものかと思ったけどそんなこともわからないなんて…恐るるに足らずだね。…てんでなってない。
…あのねぇ、私が一番好きなのはその人だけなのよ!アンタがいくら上手に変身したところで本物じゃないの。」
『……ふざけるな…!!小娘が!!』
偽シゲルは私の首に手をかけ、力を加える。偽シゲルは私の胸元に顔を近付け、心臓を狙っていた。助けて…助けてシゲル…!私が目を閉じた瞬間だった。
「僕の大切な人に何してるんだ。キミは。」
『ブラッキィイィッ!!』
『ぐぎゃあああああああああああ!!?』
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