4冊目
□189歩目。
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私は狼煙を上げるための薬草を探しに近くにあるジャングルの森で薬草を探していた。ケイヒさんに聞いた洞窟には近づかないように目的の薬草を探していく。良かった…これなら1時間もすれば集められそうだ。
もうすぐ日が暮れてしまう。その前に探し出さないと…
そう思ったときだった。突然エネコが何かにさらわれたのだ。
『ニャアン!?』
「エネコ!?」
『フィー!!』
エネコを追いかけて私とエーフィは走り出した。私は走る前にサーナイトに発煙筒を投げて指示だけした。
「サーナイト!これでケイヒさんに居場所を伝えて!私はエネコを追いかける!みんなは一塊になってケイヒさんたちがくるまでこの場所から動かないよう注意して!」
『サナァ!』
私とエーフィが走り出すとその何かはエネコを連れて森の奥にある例のお化けの出るという噂の洞窟に入っていった。
「ひっ…!」
ひんやりとした洞窟の冷気が私の体に当たり、足が竦んだ。エネコが危ない目に遭ってるかもしれない。放っておくなんて出来ない。私はお化けへの恐怖心を振り払って両頬を叩いてエーフィと顔を見合わせて頷いてから中へと入った。ケイヒさんに暗くなると夜道が見えなくなるかも知れないからと借りておいた懐中電灯が洞窟内を照らす。本当はエネコの名前を呼んで安心させるのがトレーナーとしての役割だろうけど、エネコを連れ去った何者かがわからない状態で敵の本陣へ攻めいるのはかなり危険だ。私は明かりもかなり小さく目立たないように足下だけを照らした。
「……あれは…」
洞窟内で見つけたのは通常よりもかなり大きな体のアローラペルシアンだった。奴はエネコに頬擦りをして求婚を迫っているようだった。エネコは嫌そうに手足をバタつかせ抵抗している。
お化けの正体がポケモンなら問題ない。私は前に出てアローラペルシアンに岩陰から飛び出して体当たりしてエネコを奪い返す。
「えいっ!!」
『ニャアァアッ!!?』
『ニャアンッ♪』
「エネコ!」
アローラペルシアンから解放されたエネコは一目散に私の胸に飛び込んできた。私はエネコをぎゅっと抱き止めてアローラペルシアンを睨む。
「私のエネコを返してもらうよ!」
『ニャアァアッ!!』
『フィ!』
アローラペルシアンが怒って襲ってきた。私とエネコの前にエーフィが出て、エーフィはアイアンテールでアローラペルシアンを攻撃し、アローラペルシアンは逃げ出した。
『ギニャアァアァア!!』
「ありがとう、エーフィ!…エネコ、大丈夫だった?」
私が優しい声のトーンで話しかけるとエネコは泣きながら私の胸に顔を埋める。私はよしよし、と頭を撫でていると向こうからシゲルの声が聞こえた。
「ユウキー!」
「シゲル!どうして来たんだい!?休んでてって言ったじゃないか!」
「だってキミがこの洞窟へ一人で来たって言うからさ…心配で居てもたってもいられず…」
「そう。…ありがと…あれ?みんなは?」
私はサーナイトたちが居ないことに首を傾げた。するとシゲルは「みんなは向こうで待ってるよ。」と笑う。
「さ、行こう。」
「………ねえ、シゲル。……足の包帯、どうしたの?」
私が不審に思ったのはシゲルの足の包帯だった。ケイヒさんの家で治療をしたはずなのにシゲルの足には包帯もガーゼもなく、傷跡すら残っていなかった。するとシゲルは私の方を見るなりにやりと今までシゲルと過ごして見たことのない不気味な笑みを浮かべ、私の手をがっと掴んだ。
「きっキミシゲルじゃないね!?痛っ!」
『ヒヒヒヒ……そうさ、キミの魂、美味しそうだねぇ、僕に頂戴…』
『フィッ!!』
『ニャアンッ!』
『邪魔をするな!』
エーフィとエネコが攻撃したが偽シゲルは指から何かを出してエーフィとエネコの攻撃をねじ伏せ、二人に怪我を負わせた。
『フィー!!』
『ニャアァンッ!』
「エーフィ!エネコ!二人に酷いことをシゲルの姿でしないで!」
『ヒヒヒヒ……こんな時もポケモンのことを心配するのか、やっぱり綺麗な魂だ……さぁ、こっちへ来い…さあ!!』
偽シゲルの私を引っ張る手の力が強くなる。私は大声で悲鳴を上げた。
「いやぁあぁあぁあ!!助けてシゲル!シゲルーーーーーーっ!!!」
洞窟内に私の悲鳴が木霊した。
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