4冊目

□184歩目。
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シゲルを抱えてジャングルの中に進むと小さな一軒家があり、スボミーやラフレシア、パラセクト、アママイコなど草タイプや虫タイプポケモンがたくさんいた。おばあさんはラフレシアたちにただいまと挨拶してから中へ入らせてもらうとおばあさんの家はたくさんの薬品や薬草が並んでいた。


「お嬢ちゃん、その子をすぐベッドへ。」

「は、はい!」


ベッドにすぐさまシゲルを横たわらせると私にシゲルと此処へやって来た状況をくまなく聞き、薬を渡してくれた。


「坊やの症状から見ても感染症を引き起こしているというお嬢ちゃんの考え方は正解じゃ。これを飲ませよ。感染症に効く抗生物質じゃ。」

「本当ですか!?ありがとうございます…!!」

「私はケイヒと言っての。この島で医師をしておっての。薬の知識と種類だけは豊富じゃわい。どれ、足の具合も見てやろう。」


そう言ってケイヒさんはシゲルの足を見てくれた。シゲルの足は腫れて化膿しかけていた。しかしケイヒさんは優しく微笑み、私を安心させるようにこう言ってくれた。


「…うむ、少し化膿しておるがこれなら此処で手当すれば元に戻るわ。」


良かった…最悪足を切ったりしなきゃならないなんて恐ろしい状態にはなっていなかったみたいで私はホッと胸を撫で下ろした。そしてケイヒさんにお礼を言って自己紹介をした。


「本当に…!?ありがとうございます、ケイヒさん!…あ、私、ユウキです。この子はシゲルって言います。」

「ふむ、二人とも良い名じゃの。医者は人を救うためにいる職業だからの。」


ケイヒさんは素晴らしい手際でシゲルの足を手当してくれた。


「あとは薬を飲ますだけじゃ。」

「はい!…シゲル、これ飲んで。抗生物質だよ。」


私がそう言ってもシゲルは苦しそうにしているだけで飲んでくれない。ケイヒさんは困ったのう…と言い私にこう言った。


「困ったのう……そうじゃ、ユウキ、お前さんがシゲルに飲ましておやり。」

「え?でも、どうやって…」


私がそう尋ねるとケイヒさんは大笑いして私にこう言った。


「はっはっは!野暮なこと聞きなさんな!口移しでじゃよ、口移し!」

「へ……?えっ、Σええぇえぇえぇっ!?///」

「これ、病人の前で大声出すんじゃないよ!」

「あいたっ、すっ、すみません…!でっでも口移しって…!!///」


ケイヒさんにコツンと小突かれ、私は謝りつつ真っ赤になってそう言うとケイヒさんはぱちくりと目を瞬きさせて私に尋ねる。


「おや?アンタはシゲルが死ぬかもしれないと先ほど大泣きしておったではないか。そんなに好きなら口移しくらいなんてことないんじゃないかい?」

「そっ、それはそのっ…///確かに、シゲルが死んじゃうなんて嫌だしっ………その……///」


私が赤い顔をしながらもじもじと言いよどんでいるとケイヒさんは楽しい玩具でも見つけたかのようにニヤニヤと笑い、見せつけるように言った。


「……ほほう。なるほどのう。じゃあ私が口移しで飲ませようかね。さぁシゲルー、お薬じゃよー。「Σじっ、自分がやります!///」ははは、素直じゃないのう。どれ、お前さんのポケモンたちも診てやろう。しばらく席を外すかの、みんな。」

『フィー♪』
『サナサナ♪』
『トゥー♪』
『ニャアンッ♪』
『コォーン♪』
『ライチャア♪』


ケイヒさんは気を利かせてみんなを連れてシゲルと二人っきりにしてくれた。私は顔を真っ赤にしながら抗生物質を自分の口に含んでそっとシゲルの唇を見て心の中で深呼吸をしてから自分の唇を重ねて抗生物質を飲ませた。ゴクリという喉の音が聞こえ、シゲルが飲んでくれたことを確認すると少し力が抜けてしまった。


「……///」


ファーストキスはシンジに、セカンドキスはシゲルに。でも自分からするファーストキスがこんな形ですることになるなんて思わなかった。


……シゲル……


抗生物質を飲ませてからシゲルの手を握って私は呟いた。


「………こんな形でも私からキスしてあげたんだから、早く起きなさいよ…ばか…///」


私の弱々しい小さな声が願わくば苦しそうにしているシゲルに届いて早く目覚めてくれますようにと思いながら私自身もマリン団との戦闘から嵐の海をシゲルを抱えながら島を探すという作業からの緊張がようやく解け、疲労からか眠りについてしまった。




























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