4冊目

□183歩目。
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シゲルのカメックスの背に乗せてもらって島を見つけるとそこへ上陸した。島の植物はアローラ独特な植物生態系であることからアローラ地方の島であることは理解できた。私はシゲルのカメックスにお礼を言ってモンスターボールに戻って休んでもらう。嵐の中を抜けたため島はカラッと晴れているものの、日照りがキツイ。シゲルを休ませるために木陰を探す。


シゲルを木の陰に寝かし様子を窺うとシゲルは発汗し、息が荒く、苦しそうにしていた。私はそっとシゲルのおでこに手を当てるとすごい熱を出していた。もしかして…銃弾の掠めた足の傷から海水を経由して感染症を引き起こしたのかな…!?どうしよう…今私の恰好は水着にパーカーを羽織ってショートパンツをはいている状態でいつも持っている人間用やポケモン用の救急薬箱も船の中に置いてきてしまった…もしこれが本当にそうならシゲルが死んじゃうかもしれない…シゲルが、死んじゃう…


(僕はキミを残して消えたりしない。絶対にだ。)

(キミのやりたいことを探せばいいんじゃないかな。)

(………ユウキ。…好きだ。)

(……僕は気持ちを伝えたから、これから遠慮なくどんどんキミにアタックするから覚悟しててね。)

(僕はオーキド・シゲル。ユウキを迎えに来た!!)

(僕は何も見てないし、此処にはキミの妹たちもいない。だから、もう泣いてもいいんだよ。)


頭の中でシゲルの今まで私にくれた言葉が過ぎって私は悲鳴にも似た絶叫をあげてしまった。


「やだ……っ…やだ…っ…いやああああああああああああああああああ!!」


私の目から大粒の涙が滝のように流れ出してシゲルの綺麗な肌にぽたぽたと涙が落ちる。


シゲルが死んじゃうなんて、絶対に嫌だ!!


私の絶叫を聞いて私のモンスターボールの中からみんなが出てきた。みんなは私を心配して周りに集まって来てくれる。ダメ…みんなまで、悲しい気持ちになっちゃう…私が泣いたら…私が泣いちゃダメ、泣いちゃダメなのに…止まらない…!どうしたらいいの…!?知識があったって、トップブリーダーの腕があったって、目の前の命一つ…大事な仲間のシゲルが助けられないなら意味ないじゃないか…!!パニックになって何も考えられなくなっていた私の意識を戻したのはエーフィの声だった。


『フィー!』

「…エーフィ…?」


エーフィは私を一喝するように力強く鳴いた。私はぐっと歯を食いしばってエーフィを見つめて頷いた。


「…………そう、だね…大丈夫。エーフィ、みんな…ごめん、ありがとう。大丈夫…泣いても、何も変わらない…」


私はエーフィを抱きしめてありがとう、とお礼を言って気合を入れ直した。何とかこの状況を打破するの。シゲルを絶対に助けて、みんなで兄さんたちのところへ帰る。今までだって私は、私たちは出来ていた。だから、負けたりなんかするもんか…!私がそう思っているとジャングルになっている森の方から私に話しかける声が聞こえた。


「大きな声で泣いているのは誰かの?」

「え……?」


私の前に現れたのは杖を突いた優しそうなおばあさんだった。おばあさんは私とシゲルを見ておやおや、と焦った。


「どうしたのじゃ?お嬢ちゃん。」


私は人が居たことに安心しておばあさんに縋り付いてお願いした。


「…助けてください…!!友達が…彼が死んじゃうかもしれないんです…!!」

「………これは…すぐに私の家へ来なさい!」

「はい!」





























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