4冊目
□182歩目。
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クイーンミロカロス号の船上ではカスミとリーリエが泣き出しそうな顔をし、シンジとグラジオは今にも飛び出そうとしているのをタケシとユウイチが止める。
「ぐっ…離せ!!」
「ダメだシンジ!!お前らまで行っても何にもならん!」
「何でなんだ!!?ユウイチ博士!アンタは妹が心配じゃないのか!?行かせてくれ!!」
「…………シンジくん、グラジオくん。大丈夫。ユウキの生き残るための戦略の立て方が一番生き残れるって身をもって知っただろう?あの子が居ればシゲルくんもきっと無事だ。」
「でもっ………「シーンジ、グラジオ。」
するとユウジロウがやって来てシンジとグラジオの頭をガシガシと撫でた。
「大丈夫だって。何てったってこの俺様の妹と優秀なポケモン研究者なんだぜ!絶対に生きてる!………でもな、シンジ、グラジオ。今無理してお前らまでこの荒波に突っ込んで死んじまったら…残されたリーリエやルザミーネさん、それにトバリシティで帰りを待ってるレイジはどうなる?」
「っ…」
「………」
シンジとグラジオは無言だった。ユウジロウはユウキの兄なだけあって家族の大切さがよくわかっている。だからこそ今無理をさせてシンジとグラジオの家族に心配を掛けさせるのは得策ではないと諭すように伝える。暗く沈んだ二人に太陽のような明るい笑顔でユウジロウはにかっと白い歯を見せて微笑み、こう言った。
「そんな暗い顔すんなって!ユウキはすげぇ奴だ。俺なんかとてもじゃねぇけど敵わないくらい優秀で勇敢で超自慢の妹だからな!絶対帰って来られるよう作戦立てるって。だから俺らのすることは生きていることを信じて探してやることだ!なっ、兄貴!」
「…………うん。そうだね、ユウジロウ。…ハァ…でも……家族に心配させたがらないユウキがこんな悪天候の海に飛び込んででもシゲルくんを助けに行くなんてね…あの子、泳いだりするのはあまり得意じゃないのに。」
ユウイチがそう言うとユウジロウは笑いながら「愛の力じゃね?」と言いユウイチの逆鱗に触れたらしく、頬っぺたを思いっきりつねられていた。
「Σいだだだだ!!兄貴いだい!!いだいっでえええええ!!(兄貴痛い!痛いってえええええ!!)」
「五月蠅い五月蠅いユウジロウのバカバカバカー!!ユウキが本気でシゲルくんのこと想っちゃってるみたいじゃないかー!!いつかそんな日が来るとは思うけど嫌だああああああああー!!!」
冷静な大人を見せていたかと思えば実は一番心配しパニックになっていたユウイチの姿を見てシンジはドン引きし、グラジオも心配してこう言った。
「オイ…大丈夫なのか?ユウイチ博士…」
その言葉に返答をするのは同じく下にたくさん弟妹を持つ長男、タケシだった。
「うーむ…やはり妹の成長は寂しいものがあるんだろうな…」
そう冷静にタケシが言いつつ、パニックになっているユウイチを見てカスミは呆れ顔になった。
「ダメだわ、今のユウイチ博士に何を言っても聞こえてないわ…」
「とっとりあえずお母様、嵐が過ぎたらすぐにユウキさんとシゲルさんを探すようエーテルパラダイスのヘリに連絡を!」
「ええ!もちろんです!」
こうして嵐が過ぎたらすぐにユウキたちを探せるようルザミーネがエーテルパラダイスのヘリ部隊に連絡をつけてくれた。
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