オレンジ色の旅日記

□6歩目。
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シゲルがユウザキ島にやってきて数日。ユウイチ兄さんは毎日のようにシゲルを褒めている。


『フィー♪』
『ブラッキー♪』

「エーフィにブラッキー、貴方たちすっかり仲良しね。」


ユウキの部屋には最近夜、ブラッキーが遊びに来るのが日課になっている。俗に言うエーフィてブラッキーはすっかり恋人同士のような関係なのだが、
ユウキは気が付いていない。ユウキは仲睦まじい二匹をベッドに座ったまま見つめていた。


コンコン。


「?はい?」

「僕だ、シゲル。ブラッキー来てないかい?」

「ああ、シゲル。来てるよ、どうぞ。」



部屋のドアが開けられ、お風呂上がりのシゲルがユウキの部屋へと入ってくる。シゲルはブラッキーとエーフィの姿を見て優しく微笑んだ。



「やぁ、マイスイート、すっかりエーフィとラブラブだね。」

「…ラブラブ?」

「え?」



シゲルとユウキの間に沈黙が流れる。ユウキは目をぱちくりと瞬きさせながらシゲルに尋ねた。


「エーフィとブラッキーってラブラブなの?」

「…え?そりゃ、様子を見ればわかるんじゃないかな。」

「………そうなの!?」

「そっかぁ……ユウキキミ、二匹の関係、よくわかってないんだ…」

「何だよその残念なものを見るような目は!!」

「そうだなぁ…」


シゲルはユウキの柔らかい頬に手を当て、そっと顔を見つめた。



「そんなところも可愛いと思うよ。」

「ばっ、バカなのか!?キミ!///」

「ははは、オクタンみたいに真っ赤だ。」

「だぁあ!もう!からかうな!僕はこういうの苦手なんだ!」

「(うーん…なかなか上手く行かないな。)」

「ったくもう…シゲル、キミあんまり女の子からかうのやめなよ!顔カッコイイんだから女の子泣かせるよ!」

「え?…へえ…僕のこと、カッコイイって思ってくれてるんだ?」



シゲルがそう言うとユウキは揚げ足取るな!と枕を投げつける。シゲルは痛い痛い、と言いつつ少し高鳴った胸に微笑んでいた。


『ブラッ…?』
『フィー?』

「あっ、な、何でもない、ごめんね、エーフィ、ブラッキー。…ねぇ。」

「ん?どうしたの?」

「……僕、このユウザキ島を旅行以外で出たことがないんだ。…他の地方はどんなところか、聞かせてくれない?…」

「…喜んで。じゃあ…そうだな、僕が研究者になる前、ポケモントレーナーとして旅をしていた時の話でもしようか。」

「本当…?」


シゲルがそう言い、ユウキのベッドに腰掛ける。それを見計らったエーフィとブラッキーはそれぞれトレーナーの膝の上へ移動するため
ユウキのベッドへ飛び乗った。エーフィはユウキに頭を撫でてほしいとせがむ。
ユウキはエーフィの頭を撫でながらキラキラと目を輝かせ、シゲルの話に耳を傾ける。



「あれは数ヶ月前のよく晴れた日だった。僕はマサラタウンの中でも一番優秀な子供として随分粋がっててね…」



それからシゲルは色んな事を語ってくれた。幼なじみのサトシをライバル視してバカにしたり、年上のお姉さんたちをたくさん連れて応援団なんか結成してもらって粋がってたことや最初に貰ったポケモンのゼニガメが今ではカメックスになったこと、初めてゲットしたポケモンのこと、セキエイ大会でサトシよりも先に負けてそれまでこだわってた事がいかに小さかったか、ジョウト地方では修行の旅に出たこと、イーブイを捕まえてブラッキーになったこと、ジョウト地方のシロガネ大会でサトシとのライバル対決が決着したこと、負けてしまったけどポケモンの研究者の道へ進むと決めたこと。シゲルの話は
ユウキにとって小さい頃兄たちに読み聞かせて貰ったどんな絵本よりもすごく楽しい物語だった。


「…はぁー、面白いなぁ。シゲル、すごいね。兄さんたちが褒めるのも納得だよ。」

「いや、まだまださ。…ねぇ、今度は僕の番。僕、ここに来て色んな事を知ったけどキミの事はまだ知らないんだ。…だから、教えてくれないかな。」

「…え…僕の話?別に良いけど…シゲルみたいに冒険したこともないから、つまらないかもしれないけど…」

「ううん、キミのことが知りたいんだ。」

「…変なの。そうだなぁ…僕とエーフィが初めて会ったときの話をしようか。」


ユウキがエーフィの方に目線をやると、エーフィとブラッキーはすっかり眠ってしまっていた。ユウキとシゲルの夜はまだまだ長い。








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