5冊目
□27歩目。
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キョウコさんの働くブティック・メイク売り場に連れてこられた私は奥の体験メイクコーナーのドレッサーの前にちょこんと座らされてすぐ横にレイジさんとキョウコさんに挟まれる。キョウコさんは興味津々に私を見て楽しそうにしている。
「さて、改めまして私はこのトバリデパートのブティックPOKE.QuEENのファッションスタイリスト、キョウコよ。それとこの子は私のパートナー、ミミロル。よろしくね。」
『ミミロー♪』
「あ、はい。えっと、ユウキです。レイジさんの育て屋さんでアルバイトとして働かせてもらっています。」
「キョウコさん、ユウキちゃんはポケモンブリーダーもやってるんだけど、将来は育て屋になりたいって俺のところで勉強してるんだ。」
「…あ!もしかして貴方、伝説のトップブリーダーユウキさん!?」
「「しーっ!」」
驚いて大きな声を出しそうになったキョウコさんをレイジさんと私で内緒のジェスチャーをするとさっと口をつぐんであちこち見渡す。どうやら周りには誰も居なかったようで事なきを得た。私は小声で自分の正体について話した。
「………はぁ〜〜〜〜、なるほどね。納得したわ。それでユウキちゃんはどうしてオシャレをしようと思ったの?男の子のふりをするならメイクやファッションもそこまで気にしなくってもよさそうなのに…」
「え、えっと、それはその…///」
「キョウコさん、ユウキちゃんにはカッコいい彼氏が居るんだけど胸を張って彼女ですって言えるように可愛くなりたいって健気なこと言ってたんですよ〜///」
「Σれっれれれ、レイジさん!!///」
真っ赤になって私がレイジさんの口を塞ぐとキョウコさんはきゃ〜〜〜〜〜///と歓声を上げて私を抱きしめてくる。
「あぁんもうか〜〜〜〜わいぃいぃいっ!!///そんな健気なこと言って…何この可愛い子!この子連れて帰っちゃいたい〜〜〜〜〜!!///」
「Σぐえぇっ!!くっ苦し…!!///レイジさっ…助けっ…!!」
ガクッ。私の意識は一瞬吹き飛んだ。あれ、川の向こうに綺麗なお花畑でアゲハントとバタフリー、ロゼリアやキレイハナが躍って手招きしてる…
「Σうわああぁあっ!!?ユウキちゃん!!?キョウコさん!!ユウキちゃんが三途の川渡りかけてる!!」
「あっ!?あらやだ!!?しっかりして!!」
ユウザキ島出身、ポケモントップブリーダーことユウキ(18)、まさかこんな裏社会の人間たちと全く関係のないところで死にかけるとは思いませんでした。
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