7冊目
□235歩目。
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「Σふぐっ!!?」
口を塞がれた私は手近にあったロッカーの中へライチュウと口を塞いだ人と一緒に入れられた。
最初はもがこうとしたものの大きくて温かい、優しい手とふわりと香る爽やかな石鹸の香りで私はもがくのをやめた。
まだ暗闇で目が慣れていないけど、この匂いと手の温もりはわかる。
その瞬間、ロッカーの隙間から見えたのは見張りの男たちがライチュウたちが居ないのを見に来て焦った様子で部屋を出ていく姿だった。
そして暗闇に目が慣れた瞬間、小声で私の耳に話しかけてくれる、優しいテノールの声。
「…ユウキ。」
「…っ!……シゲルっ……!!」
私の視線は私を見降ろす優しい目と交わった。視界が歪んだけれど、私はぎゅうっとシゲル首に腕を回して小声で何度も彼の名前を呼びシゲルに抱き着いた。
「シゲル…シゲル…!」
「怖かったね…ユウキ。」
温かい優しい手で何度も何度も私を撫でてくれて、シゲルはそっと私の顎を持ち上げキスをしてくれた。足元に居るライチュウはキャー、と目を覆っていた。
こんなことしてる場合じゃないのは頭ではわかってる。それでも失いかけた存在を確かめ合う様に瞼を閉じてシゲルのキスを受け入れる。時間にしてたった2秒程度の軽いキスそれでもシゲルの温もりを感じられることが幸せだった。
敵にリップ音が聞こえたり気付かれないようすぐにそっと唇を離し、シゲルは状況を教えてくれた。
「今、アイたちが敵を引き付けてくれている。敵はみんなアイとユウキが同一人物だと思っていて3分後、この部屋へ逃げ込んでくる算段だ。そこを僕たちが飛び出して加勢する流れだ。」
「アイ…みんな…」
「ユウキ、ポケモンは?」
シゲルにそう尋ねられ私は首を左右に振った。
「一応この部屋の檻は解除してみんな取り戻したけど…それでもポケモンの技を封じる首輪はまだ外せてない…それにエネコとロコンは私を大人しくさせるために見せしめに身動き取れない状態で電撃を食らわされて傷ついてるの…」
「何だって…なんて酷いことを…!!」
「私が捕まるなんて真似をしたからみんなを傷つけてしまった…怖い目に遭わせてしまった…」
私はモンスターボールの中で休んでいる二人をモンスターボール越しに撫で歯を食いしばった。シゲルはすぐに此処から出てみんなを手当てしてあげよう、と微笑んで安心させてくれた。
「大丈夫、此処からすぐに出てみんなを手当てしてあげようね…」
「…うん。」
すると次の瞬間ドアの開く音とアイの声が聞こえてきた。
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