7冊目
□233歩目。
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「はぁっ、はぁっ…」
無線機でこちらの音が漏れないように設定し、向こうの状況だけ確認していると私を浚った男、キエロが怒り狂い、団員全員に私を探すよう命令している。
途中何度か分かれ道があり、状況や足音などを聞きながら狭い通気口を進んでいく。正直これはほとんど賭けに近い。袋小路でないことだけを願い、私は道を突き進んでいった。
もちろん分かれ道では反対方向に進んで行ったように見せかけるなどの小細工は仕掛けていたがこんな狭い、それも人が通らないであろう場所を這いずり回っていれば埃が伸びたような跡に気付かれ、すぐにバレてしまうだろう。それでも、1分でも、30秒でも稼いであの子たちのもとへ駆けつけないと!
向こうが先に私を見つけ捕まえるか、私があの子たちの所へたどり着けるか。
鼓動はドクドクと早く脈打ち続け、焦っているのが自分でもわかる。でもこんな時だからこそ頭を冷静にしろ、絶対に捕まってたまるか…!!
進んで行くとついに光が見え、隙間から様子を窺うと部下たちはバタバタと走り回り出ていく姿が見えた。
「どうする?ターゲットを探しに行くか?」
「いや、でも…」
二人の部下が何か話しているのが聞こえてくる。内容から察するに私を探している…そして部屋の奥には檻の中に閉じ込められたロコンたちが居た。コイツらは見張りか…クソ、出ていってくれれば侵入出来るのに…!
「聞こえるか?ターゲットのポケモンを閉じ込めている部屋の見張りは怠るな、あの女はまず自身のポケモンを助けに行くはずだ。そこに人が居れば手を出せまい。」
通信で聞こえてくるキエロの声。
クソ…!読まれてる…!
どうする?どうやってここからあの子たちを助ける?
私がぐっと歯を食いしばったその時だった。
「東廊下でターゲットを発見した!すぐさま迎え!!」
「!」
無線機から聞こえてきたその言葉に驚いた。
どういうこと?私は今此処にいる。
それなのに私を東廊下で見つけた?まさか…アイ…?助けに来てくれたの…?
少し考えている内にキエロはターゲットである私を追い込むために全員で捕らえに行けと命令をした。見張りの二人もロコンたちを置いてもう一人の私を捕まえに出ていった。
この機会を逃すまいと私は静かにロコンたちの閉じ込められている部屋へ出る。
『…コォン!』
『ニャァンッ…!』
『ライチャア…!』
「しー。…みんな、ごめんね。お待たせ。すぐ出してあげるからね。」
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