7冊目

□226歩目。
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「ユウキを…僕の大切な女性を何処へやった?」


自分でも驚くような冷酷な声を出した僕に怯むユキノシタさん。僕は彼女に続ける。


「良いですか?僕にとって世界で一番愛している女性はユウキなんです。貴方がいくら彼女よりも優れていようと、僕には何も響かない。」

「なっ、何ですって…!!あんな小娘のどこが…!!」

「それに貴方は言いました。“ユウキのポケモン”、と。ユウキはこの病院のルールに従い、ポケモンを出していませんでした。それなのに彼女たちが何故ユウキのポケモンだとわかったんですか?」

「そっ、それは…そうよ、エーフィとサーナイトが勝手に出てきて…」

「ユウキのポケモンはよく躾けられている。彼女たちがモンスターボールから自らの意思で出る場合は“主人の危機”がほとんどだ。何より彼女たちが傷ついていることから此処で何者からの攻撃を受けたことは確実です。


 そしてそんな状態のままこんなところへ閉じ込めておくような真似をユウキは絶対にしない。」


そうだ。ユウキはポケモンたちが傷つくくらいなら自分がケガをしたり危ない目に遭っても身を挺して守るような性格だ。そんなユウキがポケモンたちを置いてどこかへ消えること自体が有り得ないんだ。


「貴方は嘘をついている。」

「……………………あはははっ、そうよ、あーあ、まさかこんなネイティにバラされるなんて思わなかったわ。」

「ユウキを何処にやった…言え!!」


僕は普段、女性にこんな風な口を利くことはしない。でも今はそんなことどうだっていい。僕が睨み付けると彼女は笑いながら答えた。


「さぁ?アタシはただ此処に誘き出して首筋に睡眠薬を打っただけよ。その後は男が連れていったわ。」

「何…!その男は誰だ、目的は!!?」

「知らないわ。…ひょっとしたら死んでるかもしれないわね。」

「ユウキっ…!!」

「でも。それを知ったところでどうするつもり?」

「…貴方の証言は取れた。病院側に突き出してカメラを見せてもらうだけですよ。」

「…は?」


僕はそう言って自らの腕についているポケギアの録音ボタンを止め、再生ボタンに変え彼女に聞かせる。そうすると彼女の顔色はみるみる変わっていき青ざめ縋るように願った。


「お願い!!やめて!!私…この病院の院長と婚約関係にあるの!!そんなのバラされたら破談になっちゃう!!」

「…貴方は罪を犯した。婚姻関係にあったにもかかわらず他の男にもちょっかいをかけるために僕の大切な人を何処の馬の骨とも知らない男に誘拐させた…!絶対に許さない。」


僕は彼女を無視し、病院長の居る部屋へと向かった。


































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