7冊目
□225歩目。
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「はぁっ、はぁっ、シゲルさん、ダメですよ!そんな体で走ったりしたら…ほら、病室へ戻りましょう?」
僕の腕に当たっていたのはユキノシタさんの胸だった。ユウキとは違って彼女の胸は大層立派なサイズであり、健全な男であればその柔らかさに心が揺らぐのかもしれない。ユキノシタさんは僕の耳元に艶っぽい声で囁く。
「…それとも…私と一緒に楽しい事でもしませんか?私、あの地味な彼女さんより経験もテクニックも豊富だから楽しませてあげられると思うわ…『トゥ!!』Σいたた!!何すんのよこのネイティ!!」
ネイティがユキノシタさんの頭を嘴でつついた。僕はその隙に腕を払いのけ、目の前にあるドアを開けるとそこには傷ついたエーフィとサーナイトが居た。
「エーフィ!!サーナイト!!」
「あ、あら、ユウキさんのポケモン、何でこんなところに…」
僕はすぐさまぐったりとしているエーフィとサーナイトを抱き起す。間違いない。彼女たちはユウキのエーフィとサーナイトだ…!!二人に何かあったって言うことはユウキが危険な目に遭っていることは明白だ。僕は彼女たちに傷薬を塗布し、ユキノシタさんを睨んだ。
「ユキノシタさん…貴方は此処に彼女たちが居ることを知っていましたね?そして意図的に僕の邪魔をした…」
「何言ってるの?シゲルさん…それよりも…」
「ユウキを…僕の大切な女性を何処へやった?」
自分でも驚くような冷酷な声を出した僕に怯むユキノシタさん。僕は彼女に続ける。
「良いですか?僕にとって世界で一番愛している女性はユウキなんです。貴方がいくら彼女よりも優れていようと、僕には何も響かない。」
「なっ、何ですって…!!あんな小娘のどこが…!!」
「それに貴方は言いました。“ユウキのポケモン”、と。ユウキはこの病院のルールに従い、ポケモンを出していませんでした。それなのに彼女たちが何故ユウキのポケモンだとわかったんですか?」
「そっ、それは…そうよ、エーフィとサーナイトが勝手に出てきて…」
「ユウキのポケモンはよく躾けられている。彼女たちがモンスターボールから自らの意思で出る場合は“主人の危機”がほとんどだ。何より彼女たちが傷ついていることから此処で何者からの攻撃を受けたことは確実です。
そしてそんな状態のままこんなところへ閉じ込めておくような真似をユウキは絶対にしない。」
そうだ。ユウキはポケモンたちが傷つくくらいなら自分がケガをしたり危ない目に遭っても身を挺して守るような性格だ。そんなユウキがポケモンたちを置いてどこかへ消えること自体が有り得ないんだ。
「貴方は嘘をついている。」
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