オレンジ色の旅日記

□6歩目。
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まだ小さな自分は兄たちのポケモンと家の掃除や洗濯物を取り込んだりしていた。


「今日は嫌な天気だね、キルリア、ケーシィ、ラルトス。」
『ラル…』
『キルー。』
『ケーシ!』
「うん、そうだね、早く洗濯物取り込まないと雨でぬれちゃうかも…」



これは僕がまだ私と言っていた時の話、あの頃はユウイチ兄さんのサーナイトもまだキルリアで、ユウジロウ兄さんのエルレイドはラルトス、ユンゲラーもケーシィだった。一人で家で過ごすことが多い僕をいつもみんなが遊んでくれていた。
僕が洗濯物を取り込もうと外に出た時、庭の草むらがガサガサと揺れた。



「Σぴゃあっ!!?なっなに!?おばけ!?」


僕は涙目になってラルトスを抱き締め、キルリアとケーシィの後ろに隠れた。けど、みんな怖がってる姿を見て僕がみんなと家を守らなきゃって箒を武器に恐る恐る草むらを覗くと、苦しそうに鳴くエーフィを見つけた。



「エーフィ…?」
『フィ…ぃ…』
「ケガしてるの!?早く手当てしないと…!」


僕がエーフィに手を伸ばすと突然何かに手を噛みつかれた。


「いっ!?イーブイの赤ちゃん…!?」

『ブイーッ!!』


そのイーブイも随分ボロボロでかなり衰弱していた。エーフィを手当てしようと伸ばした僕の手を血が出るほど深くイーブイは噛んだんだ。


『キル!!』
「っ…大丈夫、みんな。」


『ブイッ!!(貴方もお母さんを襲うの!?)』

「…!?今の…」


頭の中にイーブイの言葉が流れてきたんだ。不思議だよね。僕も最初はすごく驚いた。だってイーブイの気持ちがハッキリ聞こえたんだもん。でもこの子は怯えてるんだって思った僕はそのイーブイを撫でながら話しかけたんだ。


「大丈夫、私は襲わないよ。貴方にもお母さんにもひどい事しないから…泣かないで…?」

『…フィー…』

「エーフィ!?そんな体で立っちゃだめだよ!今傷薬を…」

『フィー(私はもう助からない。せめて、この子をお願いします…)』

「え…?」

『イブブィ!ブイーッ!!』
『フィー!』


エーフィはイーブイを僕に向けてサイコキネシスで飛ばして受け止めさせた。そしてそのままその場に倒れ込み、僕が触ると冷たくなっていた。


『ブイィイィーッ!!』
「エーフィ………死んじゃった………」


あの時は辛かったなぁ……僕のお母さんが死んじゃったばっかりで、それが重なって、イーブイの気持ちがすごく伝わってきて。雨が降り出して、僕らはびしゃ濡れになったっけ。でもそんなことも気にならないくらい悲しくて、僕はキルリアたちにイーブイを預けて、エーフィのお墓を作った。


「エーフィ、貴方を助けられなくてごめんね…イーブイは私が守るから…」



そう言って部屋に戻るとキルリアたちが僕に向かって飛びついてきた。理由はイーブイが暴れ回っていたからだった。僕はまたイーブイに近付くとイーブイは僕に向かって体当たりをしてきた。



「きゃっ!」

『イブブィ!ブイィーッ!!』

「…貴方のお母さんは、ちゃんとお墓を作った。貴方のお母さんに頼まれたの。貴方をお願いって。」

『ブイッ…!』

「貴方のお母さんの約束通り、私は貴方を守る。私を信じて。」

『ブイー…』



ゆっくりと手を伸ばして、少しずつ近付いていく。イーブイは僕の手を警戒していたけど、さっき噛んだ事を思い出して僕の表情と手のケガを何度か見比べる。



「大丈夫、私は平気。怒ってないよ。私は貴方の味方だよ。」

『………』


少ししてからイーブイはその場に倒れてしまった。僕は急いでイーブイを抱き抱えて、タオルでくるんで温める。


「ラルトス、キルリア、ケーシィ!キッチンからポケモン用のミルクとオレンの実を砕いた粉末と薬箱を持ってきて!急いで!」

『ラル!』
『キル!!』
『ケーシィ!』


ケーシィがテレポートでキッチンから言った物を取ってきてくれた。僕は急いでイーブイに傷の手当てとオレンの実を砕いた粉末をポケモン用ミルクに溶かして少しずつ飲ませた。


「大丈夫だよ…絶対に助けるからね…絶対に…!!」


そこから一晩兄さんたちが帰ってこないから生まれて初めて半分徹夜に近い事をしたかなぁ。途中、何度か睡魔に襲われたけどキルリアたちが交代交代に起こしてくれた。



『イー…ブ…?』

「…ん……イーブイ……絶対に、助けるから……」

『ブイ……』


イーブイを抱っこしたまま少し眠ってしまった。イーブイは僕の腕のケガを軽く舐めてごめんね、と伝えていたみたい。ここは夢うつつだったから忘れちゃったんだけど。


次の日、目を覚ますと兄さんたちが帰ってきてて、僕はベッドに運ばれてた。目が覚めるとイーブイが居なくて一階から兄さんたちの悲鳴が聞こえてきた。驚いた僕が一階に降りると…



『ブイッ!!』
「ふぁっ!?……イーブイ?」


イーブイはすっかり元気になって尻尾を振っていた。そして僕の腕の中に飛び込んできたんだ。


「元気になったんだね…イーブイ!」

「ユウキ、そのイーブイどうしたんだい?」

「いや…兄さんたちこそどうしたの?ボロボロだよ…?」



ユウイチ兄さんもユウジロウ兄さんもひっかき傷や噛み傷でズタボロだったなぁ…ユウジロウ兄さんはそいつにやられた…と涙目で訴えかけてくる。



「朝方帰ってきたらイーブイを抱っこしたままユウキがリビングで寝てたから僕が
ユウキのベッドまで連れて行ったんだけどイーブイはすごく暴れ回ってね…ユウジロウもこの有様だよ。」

「抱き上げようと思ったら噛まれるわ引っかかれるわ酷い目に遭ったぜ…ってユウキにはすごく懐いてるじゃねーか!」


『ブイ』
「あはは…」



とりあえず僕は苦笑いしてイーブイとエーフィが野生のポケモンに襲われてボロボロになっていたこと、イーブイのお母さんのエーフィは助けられずにお墓を作ったこと、エーフィのお母さんからイーブイを任されたことを伝えた。兄さんたちは驚いてでも僕の頭を撫でてよく助けたな、偉いぞって褒めてくれた。










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